ラットでのがん原性試験
2年間にわたる雌雄ラットを対象にしたがん原性試験では、チルゼパチドを異なる用量で週2回投与したところ、甲状腺C細胞腫瘍(腺腫および癌)の発生頻度が増加することが確認されました。これらの結果は、ラットにおける甲状腺C細胞への影響が人間でも同様に発現する可能性があるため、注目されています。
マウスでの試験
一方で、6ヵ月間のrasH2トランスジェニックマウスを用いたがん原性試験では、甲状腺C細胞の過形成や腫瘍の発生頻度に増加は認められませんでした。この結果は、試験動物や試験条件によって甲状腺への影響が異なることを示しています。
サルでの毒性試験
さらに、サルを用いた6ヵ月の反復投与毒性試験では、チルゼパチドが甲状腺C細胞に対して影響を与えることは確認されていません。このことから、異なる種における甲状腺関連の影響は一様ではないことが示されています。
臨床試験での安全性
日本国内で行われた第3相試験(SURPASS J-monoおよびSURPASS J-combo)では、甲状腺悪性腫瘍やC細胞過形成は報告されておらず、チルゼパチドの甲状腺への影響は限定的である可能性があります。しかし、甲状腺髄様癌や多発性内分泌腫症2型の家族歴がある患者については、臨床試験から除外されています。このようなリスクを最小限に抑えるために、治験中にはカルシトニン値のモニタリングが行われ、異常が見られた場合には専門医の診察が推奨されていました。
※カルシトニン
カルシトニンは、甲状腺のC細胞から分泌されるホルモンであり、特に「甲状腺髄様がん」のマーカーとして重要です。甲状腺髄様がんは、このC細胞から発生するがんで、カルシトニンの血中濃度が高くなることがそのサインとなります。
つまりカルシトニンは通常の役割に加えて、甲状腺がんの一種を発見するための目印(マーカー)としても使われているホルモンです。血中カルシトニン値が高い場合、がんの可能性があるため追加の検査を行います。
潜在的リスクと臨床上の注意点
現時点で、甲状腺C細胞腫瘍の発生リスクが完全に明らかになったわけではありませんが、動物試験ではリスクが示唆されています。甲状腺髄様癌や多発性内分泌腫瘍症2型の既往歴がある場合、チルゼパチドの使用には慎重な判断が必要です。
結論
チルゼパチドによる甲状腺がんのリスクは動物試験で一部示唆されているものの、臨床試験では重大な甲状腺関連の問題は報告されていません。しかし、甲状腺髄様癌のリスクが高い患者や、家族歴のある患者に対しては注意が必要です。
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