【論文解説】ゾレア(オマリズマブ)は花粉症に使える?重症スギ花粉症のRCTと添付文書でわかるポイント
花粉症(季節性アレルギー性鼻炎)は、内服薬や点鼻薬でコントロールできる方もいる一方、毎年「仕事・学業・睡眠が崩れる」ほどつらい方もいます。「花粉症対策どうしたら」「目がかゆい」こんな悩みは多いです。 そこで近年注目されているのが、抗IgE抗体製剤であるゾレア(一般名:オマリズマブ)という薬です。 本記事では、国内第III相RCTと添付文書を中心に、一般向けにわかりやすく整理します。
(ノバルティスファーマ株式会社 2022)
本記事の読み方(薬機法・医療広告ガイドライン配慮)
- 本記事は、論文・添付文書の内容を一般向けに要約した医療情報です。
- 効果を保証するものではなく、治療の適否は医師の診察・検査が必要です。
- 適応(使える条件)・副作用・注意点を含めて、バランスよく解説します。
花粉症の治療選択肢を整理したい方へ
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1. ゾレア(オマリズマブ)とは?
目次
1.1 作用機序:IgEを標的にする生物学的製剤
ゾレア(オマリズマブ)は、IgEに結合して、IgEが受容体(FcεRIなど)に結合するのを妨げることで、アレルギー反応の上流を抑えることが期待される薬剤です(添付文書の機序説明に基づく要約)。
(ノバルティスファーマ株式会社 2022)
1.2 日本で承認されている効能・効果(要点)
添付文書では、ゾレアの効能・効果として、 気管支喘息(難治例)、季節性アレルギー性鼻炎(既存治療で効果不十分な重症/最重症)、特発性の慢性蕁麻疹(既存治療で効果不十分)が記載されています。 「花粉症の方なら誰でも」というより、対象が限定される薬剤として整理されている点が重要です。
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2. 【日本】季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)での位置づけ(添付文書)
2.1 どんな人が対象になり得る?(適応の考え方)
添付文書上、季節性アレルギー性鼻炎は「既存治療で効果不十分な重症または最重症患者に限る」旨の記載があります。 また、原因となる花粉抗原に対するIgE陽性などの条件が示されています。花粉症に苦しんでおり、対策したい方向けです。
(ノバルティスファーマ株式会社 2022)
2.2 用法・用量:IgEと体重で“量と間隔”が決まる
添付文書の要点
- 通常、成人および12歳以上の小児に、1回75〜600mgを2週または4週ごとに皮下注射
- 1回量と投与間隔は、初回投与前の血清総IgE(IU/mL)と体重(kg)に基づき、下記の換算表で設定
- 換算表に該当しない患者への投与は行わない(添付文書の注意)
- 投与中は総IgEが上昇し得るため、投与中に測定した総IgEで用法・用量を再設定しない
- 臨床推奨用量の目安として、換算表は0.008mg/kg/[IU/mL]以上(2週)、または0.016mg/kg/[IU/mL]以上(4週)となるよう設定
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換算表の読み方(大事な注意)
- 表の「—」は換算表上の該当なしを示します。
- 該当なしの領域は、添付文書の注意事項に従い投与対象にならない前提で解釈します(個別判断は医師が行います)。
- 表脚注として「4週表に該当しない場合は2週表に従う」等の記載がありますが、いずれにせよ換算表に該当する範囲内で投与量・投与間隔が設定されます。
(ノバルティスファーマ株式会社 2022)
【4週間毎投与】投与量換算表(添付文書より)
| 体重(kg) | 投与前の血清中総IgE(IU/mL) | ||||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| ≥30~100 | >100~200 | >200~300 | >300~400 | >400~500 | >500~600 | >600~700 | >700~800 | >800~900 | |
| ≥20~25 | 75mg | 150mg | 150mg | 225mg | 225mg | 300mg | 300mg | — | — |
| >25~30 | 75mg | 150mg | 150mg | 225mg | 300mg | 300mg | — | — | — |
| >30~40 | 75mg | 150mg | 225mg | 300mg | 375mg | 450mg | 450mg | — | — |
| >40~50 | 150mg | 300mg | 300mg | 450mg | 450mg | 600mg | 600mg | — | — |
| >50~60 | 150mg | 300mg | 300mg | 450mg | 600mg | 600mg | — | — | — |
| >60~70 | 150mg | 300mg | 450mg | 450mg | 600mg | — | — | — | — |
| >70~80 | 150mg | 300mg | 450mg | 600mg | — | — | — | — | — |
| >80~90 | 150mg | 300mg | 450mg | 600mg | — | — | — | — | — |
| >90~125 | 300mg | 450mg | 600mg | — | — | — | — | — | — |
| >125~150 | 300mg | 600mg | — | — | — | — | — | — | — |
4週間毎投与の表に該当しない場合には2週間毎投与の表に従い投与すること(添付文書脚注より)。
(ノバルティスファーマ株式会社 2022)
【2週間毎投与】投与量換算表(添付文書より)
| 体重(kg) | 投与前の血清中総IgE(IU/mL) | ||||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| ≥30~100 | >100~200 | >200~300 | >300~400 | >400~500 | >500~600 | >600~700 | >700~800 | >800~900 | |
| ≥20~25 | 225mg | 225mg | 225mg | 225mg | 300mg | 300mg | 300mg | — | — |
| >25~30 | 225mg | 225mg | 225mg | 300mg | 300mg | 300mg | 375mg | 375mg | — |
| >30~40 | 300mg | 300mg | 375mg | 375mg | 450mg | 450mg | 525mg | — | — |
| >40~50 | 375mg | 375mg | 450mg | 450mg | 525mg | 525mg | 600mg | — | — |
| >50~60 | 375mg | 450mg | 450mg | 525mg | 600mg | 600mg | — | — | — |
| >60~70 | 375mg | 450mg | 450mg | 525mg | 600mg | — | — | — | — |
| >70~80 | 375mg | 450mg | 450mg | 525mg | 600mg | — | — | — | — |
| >80~90 | 375mg | 450mg | 525mg | 600mg | — | — | — | — | — |
| >90~125 | 450mg | 525mg | 600mg | — | — | — | — | — | — |
| >125~150 | 375mg | 525mg | 600mg | — | — | — | — | — | — |
2週間毎投与の表に該当しない場合には4週間毎投与の表に従い投与すること(添付文書脚注より)。
(ノバルティスファーマ株式会社 2022)
3. 【論文解説】Okuboらの第III相RCT:重症スギ花粉症でのエビデンス
3.1 研究デザイン(どんな試験?)
日本の重症スギ花粉症(標準治療で効果不十分)を対象に、標準治療(抗ヒスタミン薬+点鼻ステロイド)へオマリズマブを上乗せした場合の有効性・安全性を検証した、 無作為化・二重盲検・プラセボ対照の試験です。
(Okubo et al. 2020)
介入の骨格(論文の要点)
- 標準治療(SoC):フェキソフェナジン(内服)+フルチカゾン(点鼻)
- 比較:SoC+オマリズマブ vs SoC+プラセボ
- 評価:鼻症状、眼症状、QOL、労働生産性など
(Okubo et al. 2020)
3.2 主要結果(“どの程度改善したか”)
主要評価項目である鼻症状スコアは、SoC+オマリズマブ群がSoC+プラセボ群より有意に低下し(least squares mean difference -1.03, P<.001)、 眼症状スコアも有意に改善しました(-0.87, P<.001)。
(Okubo et al. 2020)
さらにQOL(生活の支障)や労働生産性に関する指標でも改善が示され、「標準治療に上乗せする意義」を検討する根拠の一つになります。
(Okubo et al. 2020)
主要結果まとめ(重症症状期:標準治療+ゾレア vs 標準治療+プラセボ)
| 評価項目 | 指標 | 結果(要約) | 統計 | 解釈(一般向け) |
|---|---|---|---|---|
| 鼻症状 | 平均鼻症状スコア (重症症状期) |
ゾレア上乗せ群 プラセボより良い |
LS mean差 -1.03 P<.001 |
鼻症状(鼻水等)の負担 統計学的に有意に軽減 |
| 眼症状 | 平均眼症状スコア (重症症状期) |
ゾレア上乗せ群の方 プラセボより良い |
LS mean差 -0.87 P<.001 |
目のかゆみ等の症状負担 統計学的に有意に軽減 |
| QOL | JRQLQ(総合) | ゾレア上乗せ群の方 プラセボより良い |
LS mean差 -0.51 (95%CI -0.69~-0.33) |
支障が軽減した可能性 日常生活・睡眠など |
| 症状のない日 | 鼻症状フリー日数 (中央値) |
15日 vs 10日 | (本文要約に基づく記載) | 「つらい日を減らす」 方向の変化が示唆 |
※差(-)は「ゾレア上乗せ群の方がスコアが低い=症状が軽い」方向を意味します。
(Okubo et al. 2020) [Source]
改善量のイメージ(LS mean差の大きさ:絶対値)
※このバーは「差の大きさ(絶対値)」を相対的に見せるための簡易表示です(臨床的な優劣を単純比較する目的ではありません)。
(Okubo et al. 2020) [Source]
3.3 安全性(試験での見え方)
試験では、予期しない安全性シグナルは示されず、全体として「忍容性は良好」とまとめられています。 ただし、個々の副作用リスク評価や注意事項は、添付文書に基づいて行います。
(Okubo et al. 2020)
4. 海外エビデンス:RCTとメタ解析で見る「全体像」
4.1 古典的RCT:季節性アレルギー性鼻炎での用量反応
米国の季節性アレルギー性鼻炎(ブタクサ等)に対するランダム化試験では、300mg群で鼻症状スコアがプラセボより低く(least squares means 0.75 vs 0.98、P=.002)、 レスキュー薬使用やQOLでも差が示されました。
(Condemi et al. 2001)
4.2 系統的レビュー:鼻症状・眼症状・QOL・レスキュー薬使用の総合評価
アレルギー性鼻炎におけるオマリズマブのRCTを対象とした系統的レビューとメタ解析では、 鼻症状・眼症状・QOL・レスキュー薬使用の改善を総合的に評価し、プラセボと比べた有効性と安全性の全体像を整理しています。
(Tsabouri et al. 2021)
5. 安全性:重大な副作用・注意点(添付文書の要点)
5.1 重大な副作用:ショック/アナフィラキシー
添付文書では、重大な副作用としてショック、アナフィラキシーが記載されています。 気管支痙攣・呼吸困難、血圧低下、失神、蕁麻疹、舌・口唇・咽喉頭の浮腫などが挙げられており、投与は医療機関で安全管理のもと行われます。
(ノバルティスファーマ株式会社 2022)
5.2 禁忌(投与できないケース)
添付文書上、本剤の成分に対し過敏症の既往がある患者は禁忌(投与しない)とされています。
(ノバルティスファーマ株式会社 2022)
5.3 妊娠・授乳・小児
妊娠中は「治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与」とされ、授乳中も有益性を考慮して継続/中止を検討します。 また、季節性アレルギー性鼻炎については12歳未満を対象とした臨床試験は実施していない旨の記載があります。
(ノバルティスファーマ株式会社 2022)
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よくある質問(FAQ)
添付文書上、季節性アレルギー性鼻炎は既存治療で効果不十分な重症または最重症が対象として記載されています。 そのため、まずは重症度評価や治療歴、検査(総IgE・体重など)を含めて医師が適応を判断します。
(ノバルティスファーマ株式会社 2022)
重症スギ花粉症の第III相試験では、標準治療に上乗せした群で鼻症状・眼症状・QOLの改善が示されています。 一方で、効果の大きさは個人差があり、花粉症対策が全員に同じように効くと断言はできません。
(Okubo et al. 2020)
添付文書では、初回投与前の血清総IgE濃度と体重に基づき、換算表で1回量(75〜600mg)と投与間隔(2週または4週)を設定すると記載されています。 本文の換算表をご参照ください。
(ノバルティスファーマ株式会社 2022)
添付文書では、重大な副作用としてショック/アナフィラキシーが記載されています。 そのため、投与は医療機関で安全管理のもと行われ、異常があれば速やかに対応します。
(ノバルティスファーマ株式会社 2022)
花粉以外の悩みリンク
参考文献
※本文中のIn-text referenceは「(著者 発行年)」表記(3名以上は筆頭著者 et al.)とし、下記はハーバード基準で記載しています。
- Novartis Pharma K.K. (2022) ゾレア皮下注用150mg(一般名:オマリズマブ(遺伝子組換え)) 添付文書 第4版(2022年4月改訂). Available at: https://www.genspark.ai/api/files/s/biQP46cs (Accessed: 25 February 2026).
- Okubo, K., Okano, M., Sato, N., Tamaki, Y., Suzuki, H., Uddin, A. and Fogel, R. (2020) ‘Add-On Omalizumab for Inadequately Controlled Severe Pollinosis Despite Standard-of-Care: A Randomized Study’, The Journal of Allergy and Clinical Immunology: In Practice, 8(9), pp. 3130–3140.e2. doi: 10.1016/j.jaip.2020.04.068.
- Condemi, J., LaForce, C., Nayak, A., Rowe, M., Watrous, M., McAlary, M., Fowler-Taylor, A., Racine, A., Gupta, N., Fick, R. and Della Cioppa, G. (2001) ‘Effect of omalizumab on symptoms of seasonal allergic rhinitis: a randomized controlled trial’, JAMA, 286(23), pp. 2956–2967. doi: 10.1001/jama.286.23.2956.
- Tsabouri, S., Ntritsos, G., Koskeridis, F., Evangelou, E., Olsson, P. and Kostikas, K. (2021) ‘Omalizumab for the treatment of allergic rhinitis: a systematic review and meta-analysis’, Rhinology, 59(6), pp. 501–510. doi: 10.4193/Rhin21.159. Available at: https://www.rhinologyjournal.com/Rhinology_issues/manuscript_2939.pdf (Accessed: 25 February 2026).
