エクソソーム(細胞外小胞:EVs)は研究が進む一方、医療として扱うには「中身が複雑」「製造条件で性質が変わりやすい」「標準化が難しい」という特徴があります。 そのため、リスク・デメリットは「副作用」だけでなく、由来(ドナー)・製造工程・品質管理の設計と強く結びつきます(Wang et al., 2024)。
⚠️ 薬機法・医療広告ガイドライン上の注意
本記事は、論文・ガイダンスの知見に基づき「安全性上の論点(リスク)」と「確認ポイント」を一般情報として整理するものです。 特定の治療の効果効能を保証する内容ではありません。
不安を残したまま始めない。まず「確認すべき条件」を整理します
M&B美容皮フ科クリニックでは、エクソソーム治療を検討される方に対し、治療内容・リスク・注意点を丁寧にご説明し、 患者さまが納得して選択できることを最優先にしています。
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エクソソームの危険性
エクソソームの「危険性」を考えるとき、重要なのはリスクが多層構造になっている点です。 具体的には、(1)患者さん側に生じ得る有害事象と、(2)製品側の品質の不確かさ(ばらつき)が連動します。 エクソソームは同じ細胞種由来でも培養条件などで性状が変わり得るため、品質・安定性・ロット差が規制上の課題になり得るとされています(Wang et al., 2024)。
本記事の結論(要点)
- 「有害事象が少ない」という情報だけでは、リスクを十分に評価できません(Van Delen et al., 2024)。
- 製造工程(培養条件・精製・保存)とドナー情報が、安全性リスクの根本要因になり得ます(日本再生医療学会, 2024)。
- 確認すべきポイントは「品質管理」と「ドナー情報」の透明性です(日本再生医療学会, 2024)。
1 有害事象の発生頻度
1-1. 早期試験では「忍容性が良い」と整理される一方、限界もある
EV/エクソソーム治療の臨床試験をまとめたシステマティックレビュー/メタ解析では、全体として「概ね忍容性が良い(safe and well-tolerated)」方向で整理されています(Van Delen et al., 2024)。 ただし、多くが小規模・早期段階であること、研究デザインや報告の質にばらつきがあること、長期安全性の検証が十分でないことなど、解釈上の制約が指摘されています(Van Delen et al., 2024)。
1-2. 「頻度」を一律に示しにくい構造がある
エクソソームは、培養条件・工程・保存条件などの差でも性質が変わり得るため、製品の同等性評価や標準化が難しいとされています(Wang et al., 2024)。 その結果、「副作用頻度」を一般化して語ること自体が難しくなり、個別の製造・品質情報を前提に評価する必要が出てきます(Wang et al., 2024)。
2 危険性
2-1. 製造過程の管理不足(培養条件、不純物)
国内ガイダンスでは、EV調製物のリスクは原材料の段階から製造工程、輸送、保管、投与、投与後管理までのあらゆる段階に存在し得ると整理されています(日本再生医療学会, 2024)。
製造に関連するリスク例(ガイダンスの整理)
- 感染因子の混入(例:ウイルス、細菌、真菌)(日本再生医療学会, 2024)
- 免疫反応を引き起こし得るEV以外物質の混入(日本再生医療学会, 2024)
- 工程資材からの微粒子・溶出物など、EV以外物質の混入(日本再生医療学会, 2024)
- 工程中の汚染(生物的・化学的)や、バッチ間の品質ばらつき(日本再生医療学会, 2024)
- 保管中の品質劣化(日本再生医療学会, 2024)
さらに、規制の観点では、ウイルス安全性や工程由来不純物の扱い、主要な不純物の特性把握と許容上限設定、バッチ一貫性の確保などが論点になり得ると整理されています(A Silva et al., 2021)。
2-2. ドナー情報(ウシ胎児血清、人間の病気の有無)
国内ガイダンスでは危険因子として、細胞基材(セルバンク)の由来(自己・同種・異種)、細胞種・培養条件・継代数などが挙げられています(日本再生医療学会, 2024)。 つまり「誰(何)由来の材料か」「どのように管理された細胞・材料か」が曖昧だと、リスク評価そのものが難しくなります。
2-3. 腫瘍由来エクソソーム
EV療法のリスクとして、国内ガイダンスでは「患者の細胞に由来する腫瘍・望ましくない組織の形成」が一般的リスクとして例示されています(日本再生医療学会, 2024)。 これは「必ず起こる」という意味ではなく、リスク・プロファイリングの対象として整理されている項目です。
2-4. 2026年現在、未承認(少なくとも承認医薬品として一般化していない)
エクソソーム療法は黎明期であり、規制基準の不足や不均一性・不純物、作用機序(MOA)の理解不足が品質管理上の課題として挙げられています(Wang et al., 2024)。
3 確認ポイント
3-1. 品質管理(原材料の調達から製造までの管理/検査体制)
国内ガイダンスでは、EV調製物はその複雑さゆえに規格・特性解析だけで品質のすべてを把握することが難しい場合があるため、 原材料・材料の品質管理および製造工程(調製工程)の管理によって品質を確保することが基本とされています(日本再生医療学会, 2024)。
3-2. ドナー情報
国内ガイダンスでは、細胞基材の由来(自己・同種・異種)、細胞種、培養条件、継代数などが危険因子として例示されており、 治療を検討する側は「ドナー/由来情報がどこまで開示・管理されているか」を確認することが重要になります(日本再生医療学会, 2024)。
4 M&B美容皮フ科クリニックでの対応
⚠️ 重要
以下は「安全性を高めるために実施している管理・確認項目」の説明です。治療効果を保証するものではありません。 実施内容や適応の可否は、診察のうえで個別に判断されます。
4-1. 厳格なドナー選定と感染症スクリーニング
当院で扱うエクソソーム製剤は、ドナーの適格性審査(既往歴の確認、インフォームドコンセント等)を前提として管理されます。 また、HIV、HBV、HCV、HTLV、マイコプラズマ等についてPCR法などでスクリーニングを行い、陰性を確認する体制が示されています。
4-2. 高清浄度な製造環境(クリーンルーム)と熟練者による管理
製造工程はクリーンルーム環境で培養から回収・分注まで一貫して行う体制が示されており、環境由来の汚染リスク低減に配慮しています。 また、熟練した培養士がプロトコルに基づき製造工程を管理し、再現性確保に配慮しています。
4-3. 製造ロットごとの規格試験(品質のばらつき対策)
出荷にあたっては製造ロットごとに外観、pH、無菌試験、エンドトキシン等の規格確認を実施する体制が示されています。 さらにウイルス分離試験による最終確認も含まれます。
ロット検査の例(資料記載)
- 外観・性状・風味(官能試験)
- pH(例:7.2±1の範囲)
- 無菌試験(陰性確認)
- エンドトキシン(例:0.3EU/mL以下)
- ウイルス分離試験(陰性確認)
4-4. 安全性試験(刺激性の評価)
安全性の裏付けとして、皮膚一次刺激性試験(ヒト3次元培養表皮モデル)で「非刺激性」と判定された旨や、 24時間閉塞ヒトパッチテスト(20名)で皮膚刺激指数0.0として「安全品」に分類された旨が示されています。
4-5. 保存管理(冷凍保管)と取り扱いルール
品質保持のため、冷凍保存(例:-18℃以下、推奨-30℃以下)や有効期間(冷凍で1年)など、保管条件が設定されています。 また、解凍後の再冷凍や開封後の長時間保存・再利用は避けるなど、品質低下を防ぐための取り扱いルールを厳守しています。
不安を残したまま始めない。まず「確認すべき条件」を一緒に整理します
エクソソームは「由来と品質管理」が安全性を左右します。気になる点を一つずつ確認し、納得したうえで検討しましょう。
LINEでカウンセリングを予約する無理な勧誘は一切ありません。ご相談だけでも大丈夫です。
よくある質問(FAQ)
一律に「危険」と断定できるものではありません。ただし、国内ガイダンスでは感染、免疫反応、不純物混入、品質変化、望ましくない体内分布など、 多面的リスクが全工程に存在し得ると整理されています(日本再生医療学会, 2024)。
レビューでは忍容性が良い方向で整理される一方、研究規模や報告のばらつき、長期データ不足などの限界も指摘されています(Van Delen et al., 2024)。 そのため「安全」という言葉は、どの製剤を、どの条件で、という前提を外して一般化しにくいと考えられます(Wang et al., 2024)。
まずはドナー情報(由来の透明性)と品質管理(製造〜保管〜記録)です(日本再生医療学会, 2024)。 感染症スクリーニング、無菌・エンドトキシン等の検査、ロット管理、保管条件、解凍後の取り扱いルールなどが説明できるかが目安になります。
当院では、記事内で整理したリスク(製造工程、ドナー情報、混入・汚染、保管中の品質劣化など)を踏まえ、 ドナーのスクリーニング、高清浄度環境での製造、ロットごとの規格試験、安全性試験、冷凍保管といった観点から、 可能な範囲で安全性を重視した運用を行っています。
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参考文献
- Wang, C.-K., Tsai, T.-H. and Lee, C.-H. (2024) ‘Regulation of exosomes as biologic medicines: Regulatory challenges faced in exosome development and manufacturing processes’, Clinical and Translational Science, 17, e13904. doi:10.1111/cts.13904.
- A Silva, A.K.A., Morille, M., Piffoux, M., Arumugam, S., Mauduit, P., Larghero, J., Bianchi, A., Aubertin, K., Blanc-Brude, O., Noël, D., Velot, E., Ravel, C., Elie-Caille, C., Sebbagh, A., Boulanger, C., Wilhelm, C., Rahmi, G., Raymond-Letron, I., Cherukula, K., Montier, T., Martinaud, C., Bach, J.-M., Favre-Bulle, O., Spadavecchia, J., Jorgensen, C., Menasché, P., Aussel, C., Chopineau, J., Mosser, M., Ullah, M., Sailliet, N., Mathieu, N., Rautou, P.-E., Brouard, S., Boireau, W., Jauliac, S., Dedier, M., Trouvin, J.-H., Gazeau, F., Trouillas, M., Peltzer, J., Monsel, A. and Banzet, S. (2021) ‘Development of extracellular vesicle-based medicinal products: a position paper of the group “Extracellular Vesicle translatiOn to clinicaL perspectiVEs – EVOLVE France”’, Drug Discovery Today.
- Van Delen, M., Derdelinckx, J., Wouters, K., Nelissen, I. and Cools, N. (2024) ‘A systematic review and meta-analysis of clinical trials assessing safety and efficacy of human extracellular vesicle-based therapy’, Journal of Extracellular Vesicles, 13, e12458. doi:10.1002/jev2.12458.
- 一般社団法人日本再生医療学会(2024)『細胞外小胞等の臨床応用に関するガイダンス(第1版)』.
