美容医療や再生医療の分野で注目を集める「リジュラン(Polydeoxyribonucleotide; PDRN)」。その効果を実感する患者さんは増えていますが、「なぜ効くのか?」という科学的メカニズムについては、まだ十分に理解されていないかもしれません。
リジュランの作用機序には、アデノシンA2A受容体の活性化とDNA合成のサルベージ経路という2つの重要な柱が存在します。本記事では、国際的な学術雑誌に掲載された論文をもとに、細胞レベルでリジュランがどのように組織修復を促進するのか、そのメカニズムを詳しく解説します。
📌 本記事のポイント
- リジュラン(PDRN)の2つの作用機序を科学的に理解できる
- DNA合成における「サルベージ経路」の重要性がわかる
- アデノシンA2A受容体がなぜ組織修復に寄与するのかを学べる
- 論文エビデンスに基づいた信頼できる情報を提供
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1. リジュラン(PDRN)とは何か?
目次
1.1 PDRNの基礎知識
PDRN(Polydeoxyribonucleotide: ポリデオキシリボヌクレオチド)は、サケの精巣から抽出される高純度のDNAフラグメントです。分子量は50〜1,500キロダルトン(kDa)の範囲で、13〜16個のデオキシリボヌクレオチド単位から構成されています。
PDRNは1980年代からイタリアを中心にヨーロッパで研究が進められ、創傷治癒促進や組織修復の目的で医療現場に導入されてきました。近年では美容皮膚科領域においても、肌の再生や抗老化治療として注目されています。
1.2 リジュランの臨床応用
PDRNは以下のような症例において、その効果が報告されています。
- 慢性的な創傷(糖尿病性足部潰瘍など)の治癒促進
- 皮膚の弾力性改善とコラーゲン産生の促進
- UV損傷によるDNA障害の修復サポート
- 炎症性疾患(関節炎、歯周炎など)の改善
- 虚血性組織における血管新生の誘導
⚠️ 薬機法上の注意
本記事で解説する効果・効能は、学術論文で報告されている研究結果であり、日本国内で承認された効果・効能を示すものではありません。リジュラン治療を検討される際は、医療機関で医師にご相談ください。
2. メカニズム①:アデノシンA2A受容体の活性化
2.1 アデノシンA2A受容体とは
アデノシンA2A受容体は、細胞膜上に存在するGタンパク質共役型受容体(GPCR)の一種です。この受容体が活性化されると、細胞内のセカンドメッセンジャーであるサイクリックAMP(cAMP)の濃度が上昇し、プロテインキナーゼA(PKA)が活性化されます。
Squadrito et al. (2017)によれば、PDRNの最も重要な作用機序は、このアデノシンA2A受容体への特異的な結合と活性化であるとされています。
2.2 A2A受容体活性化がもたらす生理作用
A2A受容体が活性化されると、以下のような多面的な効果が生じます。
🔬 抗炎症作用
炎症性サイトカイン(TNF-α、IL-1βなど)の産生を抑制し、抗炎症性サイトカイン(IL-10)の発現を増加させます。
🩺 血管新生の促進
血管内皮細胞増殖因子(VEGF)の発現を強力に誘導し、新たな血管形成を促進します。
🧬 細胞増殖の促進
線維芽細胞やケラチノサイト(角化細胞)の増殖を刺激し、組織修復を加速します。
⚡ 酸素消費の最適化
虚血状態や低酸素環境下において、細胞の酸素利用効率を改善します。
2.3 臨床エビデンス:糖尿病性足部潰瘍への効果
Squadrito et al. (2014)が実施した臨床試験では、PDRNが糖尿病性足部潰瘍の治癒を有意に促進することが示されました。これは、A2A受容体を介した血管新生促進と抗炎症作用によるものと考えられています。
3. メカニズム②:DNA合成のサルベージ経路
3.1 「サルベージ経路」とは何か
細胞がDNAを合成する方法には、大きく分けて2つの経路があります。
| 経路名 | 特徴 | エネルギー効率 |
|---|---|---|
| De novo経路 (新生合成経路) |
アミノ酸やCO₂などの低分子化合物から、ヌクレオチドをゼロから合成する経路 | ❌ 低い (多大なエネルギー消費) |
| Salvage経路 (サルベージ/回収経路) |
既存のヌクレオシドや塩基を再利用してヌクレオチドを合成する経路 | ✅ 高い (エネルギー節約型) |
サルベージ経路(Salvage Pathway)は、「救済経路」や「再利用経路」とも呼ばれ、DNAやRNAの分解によって生じたヌクレオシドや塩基を再度ヌクレオチドに変換し、DNA合成に利用するエネルギー効率の高い代謝経路です。
3.2 PDRNがサルベージ経路を供給するメカニズム
Akaberi et al. (2025)とSquadrito et al. (2017)の研究によれば、PDRNは以下のようなプロセスでサルベージ経路に寄与します。
📊 PDRNによるサルベージ経路の活性化プロセス
-
PDRNの分解
体内の細胞外ヌクレアーゼによってPDRNが分解され、ヌクレオシドやヌクレオチドが放出されます。 -
細胞内への取り込み
これらの成分は、ピノサイトーシス(飲作用)やエンドサイトーシスによって細胞膜を通過し、細胞内に浸透します。 -
プリン・ピリミジン塩基の供給
細胞内で放出されたプリン環(アデニン、グアニン)やピリミジン環(チミン、シトシン)が、サルベージ経路を通じてDNA/RNA合成の原料として再利用されます。 -
DNA合成の再活性化
特に損傷組織や低酸素状態にある細胞では、de novo経路が抑制されているため、サルベージ経路が極めて重要な役割を果たします。
3.3 なぜ損傷組織でサルベージ経路が重要なのか
Squadrito et al. (2017)は、以下のように指摘しています。
「損傷組織や低酸素状態の組織では、DNAのde novo合成(新生合成)が十分に機能しないことが多い。このような状況下では、サルベージ経路がDNAやRNAの分解によって生じた塩基やヌクレオシドを回収し、これらをヌクレオチドに変換して再びDNAに組み込む役割を果たす。」
つまり、代謝ストレス下にある細胞や老化細胞において、PDRNは「DNAの原料」を効率的に供給することで、細胞の修復・増殖をサポートするのです。
4. PDRNの2つの作用が相乗的に働く理由
4.1 二重のメカニズムによる組織修復
PDRNの優れた点は、アデノシンA2A受容体活性化とサルベージ経路の供給という2つの独立したメカニズムが、相乗的に作用することです。
🎯 メカニズム①
A2A受容体の活性化
- 炎症の抑制
- 血管新生の誘導
- 細胞増殖シグナルの活性化
🎯 メカニズム②
サルベージ経路の供給
- DNA/RNA合成の原料提供
- エネルギー効率の向上
- ストレス下の細胞機能回復
Akaberi et al. (2025)は、次のように述べています。
「PDRNはアデノシンA2A受容体と相互作用し、サルベージ経路として知られるプロセスを引き起こすことで創傷治癒を促進する。PDRNがこれらの受容体に結合すると、cAMPレベルが上昇し、プロテインキナーゼA(PKA)が活性化され、細胞の成長、生存、修復に影響を与える。」
4.2 UV損傷DNAの修復促進
Belletti et al. (2007)の研究では、PDRNが紫外線(UVB)によって損傷を受けた皮膚線維芽細胞のDNA修復を促進することが示されています。
UVB照射により形成されるシクロブタンピリミジン二量体(CPD)というDNA損傷に対し、PDRNはサルベージ経路を活性化させることでDNA修復を加速させ、p53タンパク質の発現を正常化します。これにより、細胞周期の異常や細胞死を防ぐことができると考えられています。
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5. 臨床応用と今後の展望
5.1 多様な医療分野での応用
PDRNは、以下のような幅広い臨床分野で研究が進められています。
- 創傷治癒: 慢性潰瘍や糖尿病性足部潰瘍、熱傷などの治療
- 整形外科: 骨芽細胞の増殖促進による骨再生、軟骨保護作用
- 皮膚科・美容医療: 皮膚の弾力性向上、コラーゲン産生促進、抗老化
- 神経科学: 脊髄損傷モデルにおける神経保護と神経再生
- 炎症性疾患: 関節炎、歯周炎、炎症性腸疾患の改善
5.2 美容皮膚科における位置づけ
美容皮膚科領域では、PDRNは「肌の再生治療」として以下のような目的で使用されることがあります。
💡 美容医療における期待される役割
- 真皮の線維芽細胞を活性化し、コラーゲン・エラスチンの産生を促進
- 肌の弾力性・ハリ・ツヤの改善をサポート
- UV損傷やエイジングによるDNA障害の修復補助
- 抗炎症作用による肌荒れや赤みの軽減
※上記は研究報告に基づく期待される役割であり、日本国内で承認された効果・効能を示すものではありません。
5.3 安全性と忍容性
Squadrito et al. (2017)の総説では、PDRNは一般的に良好な忍容性を示し、重篤な副作用の報告は限定的であるとされています。ただし、個人差がありますので、治療を受ける際は必ず医療機関で医師の診察を受けてください。
6. まとめ:PDRNの科学的メカニズム
🔬 本記事の重要ポイント
アデノシンA2A受容体の活性化により、炎症抑制、血管新生促進、細胞増殖シグナルが活性化される。
DNA合成のサルベージ経路に必要なヌクレオシドや塩基を供給し、エネルギー効率の高いDNA合成をサポートする。
損傷組織や低酸素状態の細胞では、de novo経路よりもサルベージ経路が重要であり、PDRNはこの経路を強力にサポートする。
2つのメカニズムが相乗的に作用することで、創傷治癒、組織修復、抗老化などの多様な効果が期待される。
リジュラン(PDRN)の作用機序は、単なる「成長因子の投与」ではなく、細胞本来の修復能力を引き出すという点で、非常に理にかなった治療戦略であると言えます。今後も基礎研究と臨床応用の両面から、さらなるエビデンスの蓄積が期待されます。
よくある質問(FAQ)
De novo経路(新生合成経路)は、アミノ酸やCO₂などの低分子化合物から、ヌクレオチドを一から合成する経路で、多大なエネルギーを消費します。
一方、サルベージ経路(回収経路)は、DNAやRNAの分解で生じたヌクレオシドや塩基を再利用してヌクレオチドを合成するため、エネルギー効率が非常に高いのが特徴です。
損傷組織や低酸素状態の細胞では、de novo経路が十分に働かないため、サルベージ経路が特に重要になります。PDRNはこのサルベージ経路に必要な「原料」を供給する役割を果たします。
アデノシンA2A受容体は、細胞膜上に存在するGタンパク質共役型受容体で、活性化されると細胞内のcAMP濃度を上昇させます。
これにより以下のような効果が生じます:
- 抗炎症作用: 炎症性サイトカインの産生を抑え、抗炎症性サイトカインの発現を促進
- 血管新生: VEGFの発現を誘導し、新たな血管形成をサポート
- 細胞増殖: 線維芽細胞やケラチノサイトの増殖を促進
- 酸素利用の最適化: 虚血組織において酸素消費効率を改善
リジュラン(PDRN)の効果には個人差があります。また、本記事で紹介した効果・効能は学術論文で報告されている研究結果であり、日本国内で承認された効果・効能を示すものではありません。
治療を検討される際は、必ず医療機関で医師の診察を受け、ご自身の肌質や健康状態に適した治療かどうかを確認してください。
また、妊娠中・授乳中の方、特定のアレルギーをお持ちの方などは、治療を受けられない場合があります。
当院では、科学的根拠に基づいた再生医療・肌育治療をご提供しています。リジュランをはじめ、各種成長因子療法、ダーマペン、ポテンツァなど、お一人おひとりの肌質やお悩みに合わせた治療プランをご提案いたします。
また、コース契約は一切なく、完全都度払い制を採用しておりますので、ご自身のペースで無理なく通院いただけます。
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参考文献
- Akaberi, S.M., Sharma, K., Ahmadi-Ashtiani, H.R. and Hedayati, M. (2025) ‘Polydeoxyribonucleotide in Skincare and Cosmetics: Mechanisms, Therapeutic Applications, and Advancements Beyond Wound Healing and Anti-aging’, Journal of Skin and Stem Cell, 12(1), e159728. doi: 10.5812/jssc-159728.
- Squadrito, F., Bitto, A., Irrera, N., Pizzino, G., Pallio, G., Minutoli, L. and Altavilla, D. (2017) ‘Pharmacological Activity and Clinical Use of PDRN’, Frontiers in Pharmacology, 8:224. doi: 10.3389/fphar.2017.00224.
- Squadrito, F., Bitto, A., Altavilla, D., Arcoraci, V., De Caridi, G., De Feo, M.E., Corrao, S., Pallio, G., Sterrantino, C., Minutoli, L., Saitta, A. and Vaccaro, M. (2014) ‘The Effect of PDRN, an Adenosine Receptor A2A Agonist, on the Healing of Chronic Diabetic Foot Ulcers: Results of a Clinical Trial’, Journal of Clinical & Experimental Dermatology Research, 5(6), pp. 1-9.
- Belletti, S., Uggeri, J., Gatti, R., Govoni, P. and Guizzardi, S. (2007) ‘Polydeoxyribonucleotide Promotes Cyclobutane Pyrimidine Dimer Repair in UVB-Exposed Dermal Fibroblasts’, Photodermatology, Photoimmunology & Photomedicine, 23(5), pp. 242-249. doi: 10.1111/j.1600-0781.2007.00320.x.
