エクソソーム(研究の文脈では細胞外小胞:Extracellular Vesicles(EV))は、 「どこに、どれくらい届くか(体内分布)」が投与方法で変わり得ます。
この記事では点滴(静脈内投与)と局所注射(患部投与)の違いを中心に、 期待の持ち方と注意点を論文ベースでわかりやすくまとめます。
※本記事は一般情報であり、特定の効果を保証するものではありません。適応・方法は医師の診察の上で個別に判断します。
当院でのご相談
大阪 布施のM&B美容皮フ科クリニックでは、点滴・局所注射の違い、期待できる範囲、リスク、代替選択肢まで含めて医師が説明します。
無理な勧誘は一切ありません。まずは疑問点の整理からご相談ください。
目次
結論
点滴(静脈内投与, IV)
血流に乗せて全身へ届ける投与法です。
メリットの考え方:全身コンディションを“広く”カバーしたい設計。
デメリット/論点:標的に十分届くか、他臓器への分布(オフターゲット)をどう評価するか。
局所注射
関節内・皮内など、患部へ直接投与する方法です。
メリットの考え方:患部濃度を上げやすく、全身曝露を抑える設計になり得る。
デメリット/論点:局所反応や手技リスクに加え、臨床的にプラセボを上回るかの検証が重要。
1. “違い”は結局どこにある?
| 比較軸 | 点滴(IV) | 局所注射 |
|---|---|---|
| 目的 | 全身へ届ける設計(幅広い分布) | 患部へ届ける設計(局所濃度を狙う) |
| 「届き方」 | 全身循環に入る=多臓器へ分布しやすい | 投与部位中心に分布しやすい(ただし拡散・滞留は条件依存) |
| エビデンスの見方 | 疾患別・製剤別の臨床試験が必要 | 局所の評価(痛み・機能・皮膚所見など)でプラセボ比較が重要 |
| リスクの種類 | 全身分布に伴う想定外の影響をどう拾うか | 局所反応(痛み、熱感など)+手技リスク(感染など) |
| 向いている考え方 | 「全身でのコンディション維持」を意識した設計 | 「悩みの部位がはっきりしている」設計 |
2. 投与経路で“体内分布”はどう変わる?
Tolomeo et al. (2023):IV/IT/INで分布が変わる
投与経路の違いを理解する上で重要なのが「体内分布(biodistribution)」です。 Tolomeoらはマウスで、MSC由来EVを静脈内(IV)、気管内(IT)、鼻腔内(IN)で投与し、蛍光イメージングで分布を比較しました。
IV(点滴に相当)の示唆
IVでは腹部領域(肝臓・脾臓など)にシグナルが偏る傾向が示されました。 =「全身に回るが、狙った部位に“集中する”とは限らない」可能性
局所投与(IT/IN)の示唆
ITでは肺、INでは脳領域にシグナルが偏る傾向が示されました。 =「局所投与は“狙った領域に寄せる”設計になり得る」
※この研究は前臨床であり、標識法(脂溶性蛍光色素)の限界も述べられています。臨床での効果や最適投与法を断定する根拠ではなく、「投与経路で分布が変わり得る」理解の土台として引用するのが適切です。
3. 局所注射は臨床的にどうだった?(安全性)
Bolandnazar et al. (2024):膝OAの関節内EV(三重盲検RCT)
局所注射の「実際」を語る上で、ランダム化比較試験(RCT)は重要です。 Bolandnazarらは膝変形性関節症に対し、片膝に胎盤MSC由来EV、もう片膝に生理食塩水を注入し、 VAS・WOMAC・Lequesne指数およびMRIで評価しました。
単回注入の研究であり、効果の検証としては、投与量や回数を変えたさらなる検証が必要です。
・安全性:重篤な有害事象は報告されず、局所の軽い反応(痛み・熱感など)は短期間で軽快したとされています。
・有効性:6か月時点で、症状スコアやMRI所見がプラセボを有意に上回らなかったと結論づけています。※単回注入の結果であり、投与量や回数の調整が必要。
※注意:この結果を踏まえると「1回で必ず改善」「確実に効く」等の断定は不適切です。 研究結果として、条件によってはプラセボとの差が出ない報告もあります。
4. 点滴と局所注射、どう選ぶ?
どちらが良いかは、目的(全身か局所か)と、悩みが局在しているか、さらに 安全性と品質(製剤の管理)をどう担保するかで変わります。 ISEVの患者向け注意喚起では、分離・精製が適切でない場合の不純物混入リスク等が述べられており、 “どのルートか”以前に“どう作られ、どう管理されているか”が重要だと読み取れます。
点滴(IV)を相談するとき
- 目的が「全身」なのか「特定部位」なのか
- 標的に届く根拠(体内分布の考え方)をどう説明するか
- 品質管理・製造管理の説明があるか(不純物/汚染リスクの説明を含む)
局所注射を相談するとき
- 評価指標が明確か(何がどう変われば“効果”とするのか)
- プラセボ比較など臨床データの位置づけを誤解なく説明できるか
- 局所反応・手技リスク(感染など)をどう管理するか
当院でのご相談
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よくある質問(FAQ)
最大の違いは「狙う範囲」です。点滴は全身循環に入るため広く分布しやすく、局所注射は患部濃度を狙う設計です。 前臨床では投与経路で分布が変わることが示されています。(Tolomeo et al., 2023)
疾患・製剤・用量・投与回数などで結果が変わります。例えば膝OAの三重盲検RCTでは「安全性は確認されたが、プラセボを上回る有効性は示されなかった」という報告があります。(Bolandnazar et al., 2024)
“リスクがない”と言い切る説明には注意が必要です。ISEVは、分離・精製の不備による不純物混入や安全性上の懸念を挙げています。
「目的(全身か局所か)」「困っている症状・部位」「既往歴・内服薬・アレルギー」「これまでの治療歴」を整理しておくと相談がスムーズです。 当院の解説ページも参考にしてください。
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参考文献
- Bolandnazar, N.S., Raeissadat, S.A., Haghighatkhah, H., Rayegani, S.M., Salmani Oshnari, R., Heidari Keshel, S., Zahraei, M., Aalipour, K., Babaee, M., Zamani, A., Besharati Rad, Z., Soleimani, M. and Sefat, F. (2024) ‘Safety and efficacy of placental mesenchymal stromal cells-derived extracellular vesicles in knee osteoarthritis: a randomized, triple-blind, placebo-controlled clinical trial’, BMC Musculoskeletal Disorders, 25, 856. Available at: https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11514941/ (Accessed: 11 February 2026).
- Tolomeo, A.M., Penna, A., Pozzobon, M., Rosato, A., Zuccolotto, G., Franco, C., Caicci, F., Malvicini, R., De Lazzari, G., Magarotto, F., Quarta, S., Muraca, M. and Collino, F. (2023) ‘Biodistribution of Intratracheal, Intranasal, and Intravenous Injections of Human Mesenchymal Stromal Cell-Derived Extracellular Vesicles in a Mouse Model for Drug Delivery Studies’, Pharmaceutics, 15(2), 548. Available at: https://www.mdpi.com/1999-4923/15/2/548 (Accessed: 11 February 2026).
- International Society for Extracellular Vesicles (ISEV) Regulatory Affairs Task Force (2020) ‘Patient information and safety notice: extracellular vesicles/exosomes and unproven therapies’. Available at: https://www.isev.org/patient-information-and-safety-notice–extracellular-vesicles-exosomes-and-unproven-therapies (Accessed: 11 February 2026).
- U.S. Food and Drug Administration (FDA) (2019) ‘Public Safety Notification on Exosome Products’. Available at: https://www.fda.gov/vaccines-blood-biologics/safety-availability-biologics/public-safety-notification-exosome-products (Accessed: 11 February 2026).
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