「ベビーコラーゲン」という言葉は、美容医療の現場でIII型(必要に応じてV型も含む)に着目したコラーゲン注入を指して使われることがあります。 ただし、表現が先行しやすい領域でもあるため、この記事では“何が分かっていて、何が未確定なのか”を、論文ベースで整理します。
重要(薬機法・医療広告ガイドライン配慮)
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の治療効果を保証するものではありません。適応・回数・リスクは個人差があるため、医師の診察に基づいてご判断ください。
ベビーコラーゲンを「自分に必要か」から整理する
M&B美容皮フ科クリニックでは、状態(皮膚の薄さ、しわの種類、既往歴、アレルギー等)を踏まえ、注入治療の選択肢を一緒に整理します。
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1.ベビーコラーゲンとは
いわゆる「ベビーコラーゲン」は、肌の主要構造タンパクであるコラーゲンのうち、とくにIII型(+場合によりV型)に焦点を当てた文脈で語られることが多い概念です。 研究では、皮膚コラーゲンの組成や、加齢・紫外線で生じる変化が示されています。たとえば、皮膚の主要コラーゲンとしてI型とIII型が重要であること、そして年齢とともにコラーゲン組成が変化することが論じられています(Liu et al., 2005).
目次
1-1.I型コラーゲン
I型コラーゲンは、皮膚の「強度」や「土台」に関わる主要成分として位置づけられます。Liuらの総説では、正常な成人皮膚の真皮は概ねI型が約80%、III型が約20%と説明されています(Liu et al., 2005).
1-2.III型コラーゲン
III型コラーゲンは、皮膚の「しなやかさ」に関係するとされ、加齢変化の文脈で頻繁に言及されます。Liuらは、III型が新生児皮膚で多く、加齢で割合が低下し得る点に触れています(Liu et al., 2005).
補足(数字の解釈):
研究により「対象(新生児/胎児/成人)」「評価法」「“真皮全体”か“抽出画分”か」などが異なるため、比率は一律ではありません。たとえば胎児皮膚の抽出解析では、I型70–75%、III型18–21%、V型6–8%という報告があります(Smith et al., 1986).
1-3.V型コラーゲン
V型コラーゲンは量としては“マイナー”でも、線維形成の「設計(フィブリル形成の調整)」に関わる可能性が指摘されています。レビューでは、V型がI型と共存する組織(角膜や皮膚真皮など)でコラーゲン線維形成の調節因子(regulator)として働き得る点がまとめられています(Mak et al., 2016).
また、胎児皮膚ではV型の割合が成人より高いことが示されています(Smith et al., 1986).
2.特徴(III+Vの比率:赤ちゃんの時は多いが、加齢や光により減少する)
この章のポイント
- 加齢でコラーゲンは「量」だけでなく「性状(溶けやすさ/架橋など)」も変化し得る(Miyahara et al., 1982)。
- 紫外線(光老化)では、ダメージを受けたコラーゲン環境が新しいコラーゲン産生を抑え得る(Varani et al., 2001)。
- 胎児/若年で相対的に多いIII型・V型という視点が「ベビーコラーゲン」概念の背景(Smith et al., 1986)。
2.1.加齢によるコラーゲンの変化
加齢に伴い、皮膚コラーゲンは「溶けにくくなる(不溶化)」方向の変化が報告されています。ヒト皮膚コラーゲンを対象に、溶解性やペプシン消化への反応性を比較した研究では、成熟と加齢に伴う変化が示され、乳児ではペプシンでほぼ可溶化された一方で、高齢では繰り返し消化しても不溶のまま残る割合が多いと報告されています(Miyahara et al., 1982).
こうした所見は、「年齢とともにコラーゲンが単に減る」だけでなく、組織の“硬さ/しなやかさ”に関わる性状も変化し得る、という理解につながります(Miyahara et al., 1982).
表:加齢に伴う皮膚コラーゲンの「性状」変化(研究報告の要点)
| 観点 | 若年(例:乳児) | 高齢 | ポイント |
|---|---|---|---|
| 酢酸での可溶化(溶けやすさ) | 高い傾向 | 低い傾向 | 成熟で急速に低下し、その後は加齢で緩やかに低下 |
| ペプシン消化での可溶化 | ほぼ可溶化 | 不溶が残りやすい | 乳児はほぼ可溶化/高齢では繰り返し消化しても不溶が残る |
| 解釈(例) | 「量」だけでなく「架橋・不溶化」など物性の変化が示唆 | 年齢変化の一側面として理解する | |
出典:Miyahara et al. (1982) [Source](https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/6813368/)(※研究の記述に基づく概念図)
2.2.光(紫外線)によるコラーゲンの変化
光老化(慢性的な紫外線ダメージ)では、コラーゲンが断片化し、真皮環境そのものが変化することが示されています。 研究では、重度の光老化皮膚(前腕)と日光暴露の少ない部位(臀部)を比較し、I型プロコラーゲンのmRNAとタンパクがそれぞれ約65%・約57%低下していたと報告されています(Varani et al., 2001).
さらに、光老化皮膚では部分的に分解されたコラーゲンが増え(バイオケミカル測定で約3.6倍)、この「傷んだコラーゲン環境」が線維芽細胞のプロコラーゲン産生を抑え得る、というメカニズムが議論されています(Varani et al., 2001).
表:光老化(紫外線ダメージ)で報告された変化(ヒト皮膚比較)
| 指標 | 結果(光老化部位 vs 非暴露部位) | 解釈のヒント |
|---|---|---|
| I型プロコラーゲン mRNA | 約65%低下 | 産生側(合成)の低下が示唆 |
| I型プロコラーゲン タンパク | 約57%低下 | 組織レベルでも低下 |
| 部分分解コラーゲン(断片化の指標) | 約3.6倍 | “傷んだコラーゲン環境”が増える |
| in vitro(分解コラーゲン上)での合成低下 | I型プロコラーゲン合成が低下(条件により36%/88%低下) | 環境要因が合成を抑える可能性 |
出典:Varani et al. (2001) [Source](https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11238041/)
3.コラーゲン注入の効果(研究データの読み方)
ここでは「ベビーコラーゲン」周辺で語られやすい“注入”について、臨床研究で何が評価されているかを中心に紹介します。 なお、研究対象の製剤設計(由来、組成、投与法、評価指標)が異なるため、研究結果=すべての製剤・すべての人に同じ結果とは限りません。
3-1.2025年:III型コラーゲン(rhCol III)注入のランダム化比較試験
顔の若返りを目的に、凍結乾燥したリコンビナント・ヒト化III型コラーゲン(rhCol III)の皮内注入を評価したランダム化比較試験では、治療群(通常スキンケア+注入)と対照群(通常スキンケアのみ)を比較しています(Zhang et al., 2025).
研究の要点(簡潔版)
- 参加者55名、主要評価完了は52名(治療群39 / 対照群13)(Zhang et al., 2025).
- 90日でGAISが治療群で有意に改善し、反応率の群間差は71.8%(95%CI: 54.2–89.4)(Zhang et al., 2025).
- VISIA評価で spots / wrinkles / texture / porphyrins の改善が示されています(Zhang et al., 2025).
- 重篤な有害事象は報告されず、忍容性は概ね良好とされています(Zhang et al., 2025).
※この研究は「有望な初期データ」として位置づけられており、より大規模・多施設での検証の必要性も論文内で述べられています(Zhang et al., 2025).
表:2025年ランダム化比較試験(rhCol III 皮内注入)の要点
| 項目 | 内容(要約) |
|---|---|
| デザイン | 前向き・ランダム化・ブランク対照(通常スキンケアのみ) |
| 参加者 | 55名登録、主要評価完了 52名(治療39 / 対照13) |
| 介入 | “water-light” 皮内注入(4週ごと×3回)+通常スキンケア |
| 主要アウトカム(例) | GAIS、VISIA(シミ / しわ / 肌感 等) |
| 有効率(GAIS 1〜3の割合) | 90日:治療群 71.8%、対照群 0%(表データ) |
| 安全性 | 重篤な有害事象なし、軽度AE(掻痒、アレルギー性皮膚炎)などの記載 |
出典:Zhang et al. (2025) [Source](https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC12598374/)
グラフ:GAIS推移(30/60/90日)
GAIS(30/60/90日)の平均値は Zhang et al. (2025) 本文の表(Table 5)に基づく。 [Source](https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC12598374/)
表:VISIAで有意差が示された項目(90日)
| 項目 | 研究での扱い |
|---|---|
| シミ / しわ / 肌感 | 有意差あり(補正後) |
| 毛穴 / UVによるしみ / 茶色のしみ / 赤み | 有意差なし(補正後) |
VISIAの統計的有意差の扱いは Zhang et al. (2025) 本文(Table 8)に基づく。 [Source](https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC12598374/)
3-2.2005年:I型+III型ヒトコラーゲン注入(中国での10年臨床経験)
I型+III型のヒト由来注入コラーゲン(I:III = 44:56)について、動物実験(組織学的変化)と、臨床での観察が報告されています(Liu et al., 2005).
臨床パートの要点(簡潔版)
- 対象:123名(凹みを伴う皮膚欠損:しわ・浅い瘢痕など)(Liu et al., 2005).
- 医師/患者評価で とても良い(excellent)または良い(good)が90.2%(Liu et al., 2005).
- 副反応:注入部位の軽度の赤みや不快感など(Liu et al., 2005).
- 繰り返し注入で効果持続が長くなる可能性が示唆されています(Liu et al., 2005).
※本報告は「安全性観察(オープンラベル)」の側面も強く、効果推定は研究デザインの制約を踏まえて解釈する必要があります(Liu et al., 2005).
グラフ:評価内訳(とても良いExcellent / 良いGood / 悪いPoor)
Excellent/Good/Poor の割合は Liu et al. (2005) の表(患者総合評価)に基づく。 [Source](https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC2884804/)
グラフ:Liu et al. (2005)の報告による効果持続の目安(注射回数別)
9/12/18か月の記載は Liu et al. (2005) の報告(臨床経験の記述)に基づく。 [Source](https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC2884804/)
4.安全性(“ゼロリスク”ではない、を前提に)
どの注入治療も医療行為であり、副反応や合併症が起こり得ます。臨床研究では概ね忍容性良好とされる報告もありますが(Zhang et al., 2025; Liu et al., 2005)、個人差・既往歴・注入部位・手技などでリスクは変わります。 必ず医師と「メリットとリスクのバランス」を確認してください。
一般的に説明されることが多い反応・リスク(例)
- 赤み、腫れ、内出血、圧痛(多くは一過性)
- しこり感、左右差、違和感(経過観察や調整が必要な場合)
- アレルギー反応(体質や既往で注意)
- 感染
- 血管障害などの重い合併症(頻度は高くない一方、重篤化し得るため“早期相談”が重要)
製剤由来(ヒト/動物/組換え等)や手技により、注意点は変わります。 例えば、報告では牛由来コラーゲンで過敏反応が一定割合で見られ、皮内テストが必要とされる背景が述べられています(Liu et al., 2005).
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5.よくある質問(FAQ)
目的と設計思想が異なります。論文では、コラーゲン注入は「皮膚の構造タンパク」に着目したアプローチとして議論され、III型コラーゲンの臨床データ(評価尺度や画像解析)も報告されています(Zhang et al., 2025). 一方で、どの治療が適するかは、部位・皮膚の厚み・しわの種類・既存治療歴などで変わるため、診察での判断が重要です。
研究では「顔の肌質変化」や「小じわ・質感」などを評価した報告があります(Zhang et al., 2025; Liu et al., 2005). 実際の適応は、目元などの皮膚の薄い部位、凹みの性質、皮下脂肪量なども踏まえて検討します。
注入治療である以上、赤み・腫れ・内出血などの一過性反応が起こり得ます。 研究報告でも注入部位の軽い反応(赤み、不快感など)が記載されています(Liu et al., 2005). 大切な予定がある場合は、スケジュールを含めて事前にご相談ください。
臨床試験では重篤な有害事象なしと報告される例もありますが(Zhang et al., 2025), リスクが「ゼロ」になるわけではありません。体質、既往歴、注入手技、部位により注意点が変わります。 とくに過去に注入治療で強い反応が出た方、アレルギーの既往がある方は必ず事前申告してください。
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参考文献
- Zhang, R., Huang, Z., Sheng, M., Tian, T., Xu, B., Wang, F. and Liu, D. (2025) ‘Translational Application of Recombinant Humanized Type III Collagen in Facial Rejuvenation: A Randomized Controlled Trial’, Journal of Cosmetic Dermatology, 24(11), e70529. doi: 10.1111/jocd.70529. Available at: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41208340/ (Accessed: 26 February 2026).
- Liu, B., Xu, Z., Yu, R., Wang, J., Wang, Z. and Harrell, C.R. (2005) ‘The Use of Type I and Type III Injectable Human Collagen for Dermal Fill: 10 Years of Clinical Experience in China’, Seminars in Plastic Surgery, 19(3), pp. 241–250. Available at: https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC2884804/ (Accessed: 26 February 2026).
- Varani, J., Spearman, D., Perone, P., Fligiel, S.E.G., Datta, S.C., Wang, Z.Q., Shao, Y., Kang, S., Fisher, G.J. and Voorhees, J.J. (2001) ‘Inhibition of Type I Procollagen Synthesis by Damaged Collagen in Photoaged Skin and by Collagenase-Degraded Collagen in Vitro’, The American Journal of Pathology, 158(3), pp. 931–942. doi: 10.1016/S0002-9440(10)64040-0. Available at: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11238041/ (Accessed: 26 February 2026).
- Smith, L.T., Holbrook, K.A. and Madri, J.A. (1986) ‘Collagen types I, III, and V in human embryonic and fetal skin’, American Journal of Anatomy, 175(4), pp. 507–521. doi: 10.1002/aja.1001750409. Available at: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/3521252/ (Accessed: 26 February 2026).
- Miyahara, T., Murai, A., Tanaka, T., Shiozawa, S. and Kameyama, M. (1982) ‘Age-related differences in human skin collagen: solubility in solvent, susceptibility to pepsin digestion, and the spectrum of the solubilized polymeric collagen molecules’, Journal of Gerontology, 37(6), pp. 651–655. doi: 10.1093/geronj/37.6.651. Available at: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/6813368/ (Accessed: 26 February 2026).
- Mak, K.M., Png, C.Y.M. and Lee, D.J. (2016) ‘Type V Collagen in Health, Disease, and Fibrosis’, The Anatomical Record, 299(5), pp. 613–629. doi: 10.1002/ar.23330. Available at: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26910848/ (Accessed: 26 February 2026).
- M&B美容皮フ科クリニック (n.d.) ‘コラーゲン注入(Baby Collagen)’. Available at: https://mb-clinic.jp/treatment/baby_collagen/ (Accessed: 26 February 2026).
