トルリシティとマンジャロの違い|効果・副作用・薬価を比較|M&B美容皮フ科クリニック|東大阪市の美容皮膚科

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トルリシティとマンジャロの違い|効果・副作用・薬価を比較

お薬の基礎知識 論文解説

トルリシティ(一般名:デュラグルチド)とマンジャロ(一般名:チルゼパチド)は、どちらも週1回、自分で皮下注射する2型糖尿病の治療薬です。注射の回数も、ペン型の使い切りデバイスも似ていますが、効き方の仕組みも、血糖値の下がり方も、副作用の出方も、薬価も違います。

この2剤には、ほかの薬の組み合わせにはあまりない特徴があります。日本人だけを対象に、2剤を正面から比べた臨床試験(SURPASS J-mono)があるということです(Inagaki et al., 2022)。別々の試験の数値を横に並べて推測するのではなく、同じ試験の中で、同じ期間、同じ対象で比べた結果を見ることができます。心血管疾患のある人を対象にした4年間の試験(SURPASS-CVOT)も、この2剤の直接比較です(Nicholls et al., 2025)。

結論を先にお伝えすると、違いは大きく3つです。①仕組み=トルリシティはGLP-1受容体に、マンジャロはGIP受容体とGLP-1受容体の両方に作用します。②効果と副作用=日本人636人を52週比べた試験では、HbA1cの低下はマンジャロのほうが1.09〜1.53%ポイント大きく、同時に副作用の発現頻度も高い結果でした(マンジャロ51.9〜60.6%、トルリシティ37.1%)。③用量の幅と薬剤費=トルリシティは0.75mgと1.5mgの2規格、マンジャロは2.5mgから15mgまでの6規格で、マンジャロを増量すると薬剤費の差が広がります。

この記事では、その2つの直接比較試験と、両剤の電子添文(医療用医薬品の公式な説明書)、厚生労働省が定める薬価をもとに、それぞれの違いを見ていきます。どちらを使うかは、血糖値の状態・体格・合併症・副作用の出やすさ・費用をふまえて主治医が判断します。この記事は、その相談のための材料です。

本記事は一般的な医療情報であり、診断・治療の代替ではありません。日本でのトルリシティとマンジャロの効能又は効果は、どちらも「2型糖尿病」だけです。体重を減らす目的での使用は、いずれも承認されていません。薬の開始・変更・中止・用量の調整は、必ず主治医と相談してください。紹介する数値は、臨床試験の対象となった方々での平均の結果で、効果や副作用の出方には個人差があります。内容は2026年9月時点のものです。

お急ぎの方は、3. 直接比べた試験と4. 副作用の違いからお読みください。薬価は6. 薬価と自己負担、打ち忘れたときの対応は8. 使い方の違いにまとめています。

この記事でわかること

  • 2剤の承認・用量・作用の仕組みの違い(GIPとは何か)
  • 日本人636人を52週比べた試験で、HbA1c(過去1〜2か月の血糖の平均を示す値)と体重がどう変わったか
  • 同じ試験の中で、副作用の頻度にどれだけ差があったか
  • 心臓・血管について、それぞれの試験でわかっていること・わかっていないこと
  • トルリシティからマンジャロへ切り替えるときに、電子添文が定めていること
  • 打ち忘れたときの対応と、室温で保存できる日数の違い
  • 厚生労働省が定める薬価と、保険診療での4週分の薬剤費

1. 2つの薬の基本

出典(日本イーライリリー, 2026a; 2026b)。薬価は薬価基準収載品目リストによる(厚生労働省, 2026)
項目トルリシティマンジャロ
一般名デュラグルチド(遺伝子組換え)チルゼパチド
分類持続性GLP-1受容体作動薬持続性GIP/GLP-1受容体作動薬
日本での承認0.75mg:2015年7月3日承認、2015年9月発売
1.5mg:承認番号 30600AMX00141、2025年7月発売
2022年9月26日承認、2023年4月発売
効能又は効果2型糖尿病2型糖尿病
用法及び用量週1回0.75mgを皮下注射。患者の状態に応じて週1回1.5mgに増量できる週1回5mgを維持用量として皮下注射。週1回2.5mgから開始し、4週間投与した後に5mgへ増量。効果不十分な場合は4週間以上の間隔で2.5mgずつ増量し、最大は週1回15mg
規格0.75mg、1.5mg の2規格2.5mg、5mg、7.5mg、10mg、12.5mg、15mg の6規格
薬価(1キット)0.75mg 2,699円/1.5mg 5,435円2.5mg 1,443円〜15mg 8,658円
規制区分劇薬、処方箋医薬品、生物由来製品劇薬、処方箋医薬品
貯法どちらも2〜8℃で保存。有効期間24か月

どちらの薬も、電子添文の「効能又は効果に関連する注意」に「本剤の適用は、あらかじめ糖尿病治療の基本である食事療法、運動療法を十分に行った上で効果が不十分な場合に限り考慮すること」と、同じ文章で書かれています(日本イーライリリー, 2026a; 2026b)。注射をすれば食事療法と運動療法が不要になる、という位置づけの薬ではありません。

トルリシティは、長く0.75mgの1規格だけでしたが、1.5mg製剤が2025年7月に発売され、増量できるようになりました。この記事で紹介する直接比較試験のうち、SURPASS J-monoが比較したのは0.75mg、SURPASS-CVOTが比較したのは1.5mgです。どの用量と比べた結果なのかで、読み方が変わります。

2. 作用の仕組み

食事をとると、腸から血糖値に関わるホルモン(インクレチン)が出ます。代表がGLP-1とGIPの2つです。GIPはグルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(glucose-dependent insulinotropic polypeptide)の略で、「血糖値が高いときにインスリンの分泌を促すホルモン」という意味の名前です。

トルリシティ

GLP-1受容体に作用します。電子添文の薬効分類名は「持続性GLP-1受容体作動薬」です(日本イーライリリー, 2026b)。

マンジャロ

GIP受容体とGLP-1受容体の両方に作用します。薬効分類名は「持続性GIP/GLP-1受容体作動薬」です(日本イーライリリー, 2026a)。SURPASS-CVOTの論文でも、チルゼパチドは「GLP-1受容体とグルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド受容体の両方に作用するインクレチン作動薬」と説明されています(Nicholls et al., 2025)。

つまり、作用する受容体が1種類か2種類かという違いです。なお、両剤とも電子添文に「DPP-4阻害剤と併用した際の臨床試験成績はなく、有効性及び安全性は確認されていない」と書かれています(日本イーライリリー, 2026a; 2026b)。マンジャロについては、同じ成分を含むゼップバウンドなど他のチルゼパチド製剤と併用しないことも定められています(日本イーライリリー, 2026a)。

3. 直接比べた試験

2剤を直接比べた大規模な試験は2つあります。どちらも、両剤を製造販売している日本イーライリリー社の親会社(Eli Lilly and Company)が資金を提供した試験です。結果を読むときは、この点も含めて見る必要があります。

SURPASS J-mono(日本人636人・52週)

食事・運動療法で血糖コントロールが不十分な日本人の2型糖尿病636人を、マンジャロ5mg・10mg・15mg、またはトルリシティ0.75mgの4群に無作為に分け、52週間、二重盲検(医師も患者もどちらの薬かわからない状態)で比べた第III相試験です。国内46施設で行われ、615人(97%)が完了しました。平均年齢56.6歳、76%が男性でした(Inagaki et al., 2022)。

SURPASS J-mono の52週後の結果。HbA1cと体重は最小二乗平均。数値は電子添文17.1.2、体重変化率と完了率は論文による(日本イーライリリー, 2026a; Inagaki et al., 2022)。「副作用」は薬との関係が否定できないものを指し、論文が報告する「有害事象」(関係を問わない)とは集計が異なります
群HbA1cの変化トルリシティとの差
[95%信頼区間]
体重の変化副作用の発現頻度
マンジャロ5mg
(159人)
−2.37%ポイント−1.09
[−1.27, −0.90]
−5.8kg(−7.8%)52.8%
マンジャロ10mg
(158人)
−2.55%ポイント−1.27
[−1.45, −1.08]
−8.5kg(−11.0%)51.9%
マンジャロ15mg
(160人)
−2.82%ポイント−1.53
[−1.71, −1.35]
−10.7kg(−13.9%)60.6%
トルリシティ0.75mg
(159人)
−1.29%ポイント—−0.5kg(−0.7%)37.1%

この表の体重の数値は、2型糖尿病の治療として行われた試験で、副次的に測定された結果です。前述のとおり、両剤とも日本で体重を減らす目的での使用は承認されていません。

主要評価項目は52週後のHbA1cの変化量で、電子添文には「本剤のいずれの用量でもデュラグルチド0.75mgに対する優越性が検証された(p<0.001)」と記載されています(日本イーライリリー, 2026a)。開始時のHbA1cは4群とも8.15〜8.20%、体重は76.5〜79.1kgでほぼそろっていました。

同じ試験の中で、マンジャロの3群はいずれもトルリシティ0.75mgより副作用の発現頻度が高く、最も高かったのは15mg群の60.6%、トルリシティ0.75mg群は37.1%でした(5mg群52.8%、10mg群51.9%で、用量が増えるほど単純に高くなるという関係ではありません)。重症の低血糖はどの群でも報告されず、血糖値54mg/dL未満の低血糖はマンジャロ15mg群の2人(1.3%)だけでした(日本イーライリリー, 2026a)。効果と副作用を切り離さず、同じ表で見ることが大切です。

SURPASS-CVOT(約1万3千人・中央値約4年)

心血管疾患のある人での直接比較

動脈硬化性の心血管疾患をもつ2型糖尿病の人13,299人を、マンジャロ(最大15mgまで増量)とトルリシティ1.5mg(増量なし)に無作為に分けた、二重盲検・イベント主導型の試験です。解析対象は6,586人と6,579人、平均64.1歳、女性29.0%、BMI 32.6、HbA1c 8.4%、糖尿病歴14.7年でした。観察期間の中央値は210.4週(約4年)です(Nicholls et al., 2025; 日本イーライリリー, 2026a)。うち日本人は93人(マンジャロ47人、トルリシティ46人)でした(日本イーライリリー, 2026a)。

HbA1cは144週の時点でマンジャロ群−1.80、トルリシティ群−0.93%ポイントでした。副作用の発現頻度は60.3%と50.1%で、悪心23.3%対20.1%、下痢19.6%対14.3%、食欲減退16.0%対8.9%と、消化器の症状はマンジャロ群で多く報告されています。重症低血糖はどちらも0.7%でした(日本イーライリリー, 2026a)。心臓・血管の結果は次の章で扱います。

旧来「マンジャロは登場して間もないため長期のデータがない」と説明されることがありましたが、約1万3千人を約4年追跡したこの試験の結果が2025年に公表され、日本の電子添文にも収載されています(Nicholls et al., 2025; 日本イーライリリー, 2026a)。一方で、トルリシティは2015年から日本で使われており、使用された期間そのものは長い薬です。

4. 副作用の違い

まず、同じ試験の中で比べた数値を見ます。SURPASS J-monoで報告された主な副作用の頻度です。

SURPASS J-mono(日本人636人・52週)で報告された主な副作用。電子添文17.1.2による(日本イーライリリー, 2026a)。「—」は、その群の「主な副作用」として電子添文に挙げられていないことを示し、発現が0だったという意味ではありません
副作用マンジャロ5mgマンジャロ10mgマンジャロ15mgトルリシティ0.75mg
悪心(吐き気)11.9%19.6%19.4%6.9%
便秘13.8%16.5%11.9%8.8%
食欲減退13.8%12.0%21.3%4.4%
下痢10.1%——3.8%
血圧の下がりすぎ
(収縮期血圧90mmHg以下かつ
20mmHg以上の低下)
1.9%3.2%5.0%0%

この試験では、胃腸の症状はマンジャロのほうが多く報告されました。ただしこれはトルリシティ0.75mgと比べた場合の、この試験での頻度です。トルリシティ群でも37.1%に副作用が報告されており、別の用量や別の対象での比較にそのまま当てはまるものではありません。

電子添文に載っている項目の違い

電子添文の記載にもとづく(日本イーライリリー, 2026a; 2026b)。頻度の表記も電子添文のとおり
項目トルリシティマンジャロ
重大な副作用低血糖(頻度不明)、アナフィラキシー・血管性浮腫(頻度不明)、急性膵炎(0.1%)、イレウス(頻度不明)、重度の下痢・嘔吐(頻度不明)、胆嚢炎・胆管炎・胆汁うっ滞性黄疸(頻度不明)、肝機能障害(頻度不明)低血糖(頻度不明)、急性膵炎(0.1%未満)、胆嚢炎(頻度不明)・胆管炎(0.1%未満)・胆汁うっ滞性黄疸(頻度不明)、アナフィラキシー・血管性浮腫(頻度不明)、イレウス(頻度不明)
5%以上のその他の副作用便秘、悪心、下痢悪心、嘔吐、下痢、便秘、腹痛、消化不良、食欲減退
禁忌2剤とも同じ3項目。①本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者 ②糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡又は前昏睡、1型糖尿病の患者 ③重症感染症、手術等の緊急の場合
低血糖2剤とも、スルホニルウレア剤・速効型インスリン分泌促進剤・インスリン製剤との併用で低血糖のリスクが増加するおそれがあり、これらの薬剤の減量の検討が求められています
そのほかの注意甲状腺関連の症候の確認。ラットの長期がん原性試験で甲状腺C細胞の腫瘍の発生頻度の増加が報告されている(ヒトでの1.5mg投与時の血漿中曝露量の5.8倍以上)甲状腺関連の症候の確認。全身麻酔・深い鎮静下での誤嚥の報告、糖尿病網膜症の悪化、脱水による急性腎障害、BMI 23未満での有効性・安全性は未検討
共通する注意2剤とも、GLP-1受容体作動薬の投与後に非動脈炎性前部虚血性視神経症(NAION)の発現リスク増加の可能性を示唆する観察研究が報告されている旨が、同じ文章で記載されています(薬剤との因果関係は明らかではない)。妊娠中はインスリン製剤を使用します

どちらの薬にも、警告欄(電子添文の冒頭に置かれる最も重い注意)は設けられていません。強い吐き気や、嘔吐を伴う持続的な激しい腹痛などがあれば、自己判断で続けたり中止したりせず、医療機関に連絡してください。

5. 心臓・血管

トルリシティ:REWIND(2019年)

50歳以上で、心血管疾患の既往またはその危険因子をもつ2型糖尿病の人9,901人を、デュラグルチド1.5mgとプラセボに分け、中央値5.4年追跡した24か国371施設の試験です。心筋梗塞・脳卒中・心血管死をまとめた指標は、デュラグルチド群594人(12.0%)、プラセボ群663人(13.4%)で、ハザード比0.88(95%信頼区間 0.79〜0.99、p=0.026)でした。総死亡には差がありませんでした(ハザード比0.90、0.80〜1.01、p=0.067)。消化器の有害事象は47.4%対34.1%でした(Gerstein et al., 2019)。

マンジャロ:SURPASS-CVOT(2025年)

3章で紹介した試験です。心筋梗塞・脳卒中・心血管死をまとめた指標は、マンジャロ群801人(12.2%)、トルリシティ1.5mg群862人(13.1%)で、ハザード比0.92(95.3%信頼区間 0.83〜1.01)。あらかじめ定めた非劣性マージン1.05を下回り、トルリシティに劣らないことが示されました(非劣性 P=0.003)。一方、トルリシティを上回ることは示されていません(優越性 P=0.09)(Nicholls et al., 2025)。

この2つの試験は、比較した相手が違います(REWINDはプラセボ、SURPASS-CVOTはトルリシティ1.5mg)。SURPASS-CVOTの結果が意味するのは「マンジャロはトルリシティに劣らなかった」ということであって、「マンジャロのほうが心臓・血管を守る」ということではありません。

読むときに、あわせて知っておきたいことが2つあります。1つは、REWINDで使われた1.5mgは、日本では2025年7月まで使えなかった用量だということです。もう1つは、REWINDは日本の電子添文には収載されていないことです。トルリシティの電子添文の臨床成績の欄(17.1)に載っているのは、すべて国内で実施された試験です(日本イーライリリー, 2026b)。そして、日本ではどちらの薬も、心血管イベントを減らすことを効能として承認されていません。承認されている効能は、2剤とも2型糖尿病だけです。

6. 薬価と自己負担

薬価は、保険診療で使われる薬について国が定める価格です。ここでは、2型糖尿病の治療として保険診療で処方された場合の薬剤費だけを示します。診察料・検査料・調剤料などは含みません。

薬価と4週分(週1回×4キット)の薬剤費(厚生労働省, 2026)。薬価基準収載品目リスト・注射薬(令和8年8月13日収載品目を反映)にもとづく値で、薬価改定により変わります
製剤薬価(1キット)4週分(10割)3割負担の場合
トルリシティ0.75mg2,699円10,796円約3,239円
トルリシティ1.5mg5,435円21,740円約6,522円
マンジャロ2.5mg(開始用量)1,443円5,772円約1,732円
マンジャロ5mg(維持用量)2,886円11,544円約3,463円
マンジャロ7.5mg4,329円17,316円約5,195円
マンジャロ10mg5,772円23,088円約6,926円
マンジャロ12.5mg7,215円28,860円約8,658円
マンジャロ15mg(最大用量)8,658円34,632円約10,390円

トルリシティ0.75mgとマンジャロ5mg(どちらも通常の維持用量)を4週分で比べると、10割で10,796円と11,544円で、大きな差はありません。差が出るのはマンジャロを増量した場合で、15mgではトルリシティ0.75mgの約3.2倍になります。

なお、この価格が適用されるのは2型糖尿病の治療として保険診療で処方された場合です。2型糖尿病以外を目的とした自由診療では保険が適用されず、費用は医療機関ごとに定められます。

7. 切り替えの注意

トルリシティからマンジャロへの切り替えは、実際に検討されることがあります。海外では、この切り替えを調べた比較試験があります。

SURPASS-SWITCH(海外・282人・40週)

HbA1c 7.0〜9.5%、BMI 25以上で、デュラグルチド0.75mgまたは1.5mgを6か月以上続けていた2型糖尿病の人282人を、チルゼパチドへ切り替える群(139人)とデュラグルチドを4.5mgまたは最大耐用量まで増量する群(143人)に無作為に分けた、5か国38施設の第4相試験です。40週後のHbA1cの変化は−1.44%ポイントと−0.67%ポイント(差 −0.77、95%信頼区間 −0.98〜−0.56、P<0.001)、体重は−10.5kgと−3.6kg(差 −6.9kg、−8.3〜−5.5、P<0.001)でした。重篤な有害事象は10人(7.2%)と10人(7.0%)で、多かった有害事象は悪心と下痢です(Billings et al., 2025)。

この試験には、日本で読むときに押さえておきたい条件が2つあります。1つは非盲検(どちらの薬かわかる状態)で行われたことで、論文自身が限界として挙げています。もう1つは、比較相手のデュラグルチド4.5mgが日本では承認されていない用量だということです。日本でのトルリシティの上限は1.5mgです(日本イーライリリー, 2026b)。

日本の電子添文が定めていること

  • トルリシティから切り替える場合でも、マンジャロは週1回2.5mgから開始します。電子添文の用法及び用量に、切り替えの場合の例外は書かれていません(日本イーライリリー, 2026a)
  • 2剤のあいだに用量の換算はありません。トルリシティ0.75mgとマンジャロ2.5mgが同じ強さ、といった対応関係は、どちらの電子添文にも記載されていません
  • 投与する曜日を変える必要がある場合は、前回の投与から少なくとも72時間以上あけます(日本イーライリリー, 2026a; 2026b)
  • マンジャロでは、胃腸障害などで忍容性が得られない場合、減量または増量の延期を考慮することとされています(日本イーライリリー, 2026a)

反対の向き(マンジャロからトルリシティへ)についても、換算の規定は電子添文にありません。また、両剤とも「3〜4か月間投与して効果が不十分な場合には、より適切と考えられる治療への変更を考慮すること」と同じ文章で定められています(日本イーライリリー, 2026a; 2026b)。切り替えるかどうか、いつ切り替えるかは、主治医が判断します。

8. 使い方の違い

電子添文の記載にもとづく(日本イーライリリー, 2026a; 2026b)
項目トルリシティマンジャロ
投与の間隔2剤とも週1回。同一曜日に投与します
打ち忘れたとき2剤とも同じ文章で定められています。次回投与までの期間が3日間(72時間)以上であれば、気づいた時点で直ちに投与し、その後はあらかじめ定めた曜日に投与します。次回投与までの期間が3日間(72時間)未満であれば投与せず、次のあらかじめ定めた曜日に投与します
冷蔵保存2〜8℃で遮光保存。凍結を避け、凍結した場合は使用しません
室温で保存する場合遮光し、30℃を超える場所を避け、14日以内に使用30℃を超えない場所で外箱から出さずに保存し、21日以内に使用
注射する部位腹部、大腿部または上腕部。同じ部位の中でも、毎回注射する場所を変えます。静脈内・筋肉内には投与しません
自己注射十分な教育訓練を受け、自分で確実に投与できることを確認したうえで、医師の管理指導のもとで行います

打ち忘れの判断で間違えやすいのが、「予定日から何日過ぎたか」ではなく「次の予定日まであと何日あるか」で決めるという点です。たとえば毎週月曜日に打っている方が木曜日に忘れていたことに気づいた場合、次の月曜日まで4日あるので、その時点で打ち、その後は月曜日に戻します。土曜日に気づいた場合は、次の月曜日まで2日しかないため打たず、月曜日を待ちます。迷ったときは主治医または薬剤師に確認してください。

9. 選び方の考え方

日本糖尿病学会の「2型糖尿病の薬物療法のアルゴリズム(第2版)」は、「糖尿病の病態に応じて治療薬を選択することを最重要視」する考え方をとっています。Step 1で病態に応じて薬を選び、Step 2で安全性に配慮する、という順序です(日本糖尿病学会, 2023)。

このアルゴリズムは、チルゼパチドが2023年4月に発売されたことをきっかけに改訂され、肥満(インスリン抵抗性を想定)の場合の候補薬にチルゼパチドが追加されました。一方で、「BMI 23kg/m²未満の症例や、高齢者での使用実績がないことから、安全性の観点から非肥満の症例における候補薬剤に挙げることは見送った」と明記されています(日本糖尿病学会, 2023)。マンジャロの電子添文にも「投与開始時のBMIが23kg/m²未満の患者での本剤の有効性及び安全性は検討されていない」とあり、内容は一致しています(日本イーライリリー, 2026a)。

効果については、同じアルゴリズムの中で「チルゼパチドは日本人2型糖尿病においてGLP-1受容体作動薬デュラグルチドよりHbA1cを有意に低下させ、HbA1c 5.7%未満の達成率も高かったことから、血糖正常化を目指す場合には良い選択肢となると考えられる」と述べられています(日本糖尿病学会, 2023)。

整理すると、この2剤は「効果の強い順に並べて上から選ぶ」ものではなく、体格(BMI)、年齢、目標とするHbA1c、合併症、副作用の出やすさ、費用といった条件を組み合わせて、主治医が選ぶものです。すでにどちらかで治療中で、経過が安定している場合に、より効果の大きい薬へ変えることが常に良いとはかぎりません。気になることがあれば、次の受診のときに主治医に伝えてみてください。

10. よくある質問

トルリシティとマンジャロは、何がいちばん違いますか?
作用する受容体の数が違います。トルリシティはGLP-1受容体に、マンジャロはGIP受容体とGLP-1受容体の両方に作用します。GIPはグルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチドの略です。日本人636人を52週比べた試験では、HbA1cの低下はマンジャロのほうが1.09〜1.53%ポイント大きく、体重の減少も大きい一方、副作用の発現頻度も高い結果でした(マンジャロ51.9〜60.6%、トルリシティ37.1%)。用量の幅も違い、トルリシティは0.75mgと1.5mgの2規格、マンジャロは2.5mgから15mgまでの6規格です。
打ち忘れたときは、いつまでなら打てますか?
2剤とも電子添文の記載は同じで、判断の基準は「予定日から何日過ぎたか」ではなく「次の予定日まであと何日あるか」です。次回投与までの期間が3日間(72時間)以上あれば、気づいた時点で直ちに投与し、その後はあらかじめ定めた曜日に戻します。次回投与までの期間が3日間(72時間)未満であれば投与せず、次のあらかじめ定めた曜日に投与します。曜日を変える場合も、前回の投与から72時間以上あけます。迷ったときは主治医または薬剤師に確認してください。
副作用が心配です。どちらのほうが出にくいですか?
日本人を対象にしたSURPASS J-mono(52週)では、副作用の発現頻度はトルリシティ0.75mg群37.1%、マンジャロ群51.9〜60.6%で、悪心(6.9%対11.9〜19.6%)や食欲減退(4.4%対12.0〜21.3%)などの差がありました。ただしこれはトルリシティ0.75mgと比べた場合の、この試験での結果です。トルリシティ群でも37.1%に副作用が報告されており、急性膵炎・イレウス・アナフィラキシーなどの重大な副作用は両剤の電子添文に記載されています。出方には個人差があるため、体調の変化があれば主治医に相談してください。
トルリシティからマンジャロに切り替えると、量はどうなりますか?
切り替える場合でも、マンジャロは週1回2.5mgから開始します。電子添文の用法及び用量に、切り替えの場合の例外は書かれていません。また、2剤のあいだに用量の換算はなく、トルリシティ0.75mgがマンジャロの何mgに相当する、といった対応関係はどちらの電子添文にも記載されていません。曜日を変える必要がある場合は、前回の投与から少なくとも72時間以上あけます。
どちらのほうが心臓や血管を守りますか?
この2つの試験からは比べられません。トルリシティのREWIND(9,901人、中央値5.4年)はプラセボと比べた試験で、心筋梗塞・脳卒中・心血管死をまとめた指標のハザード比は0.88(95%信頼区間0.79〜0.99)でした。マンジャロのSURPASS-CVOT(約1万3千人、中央値約4年)はトルリシティ1.5mgと比べた試験で、ハザード比0.92(95.3%信頼区間0.83〜1.01)。トルリシティに劣らないことは示されましたが、上回ることは示されていません。なお、日本ではどちらの薬も、心血管イベントを減らすことを効能として承認されていません。
薬代はどのくらい違いますか?
厚生労働省が定める薬価(令和8年8月13日収載品目を反映)では、1キットあたりトルリシティ0.75mgが2,699円、1.5mgが5,435円、マンジャロは2.5mg 1,443円から15mg 8,658円です。週1回×4週分の薬剤費(10割)はトルリシティ0.75mgが10,796円、マンジャロ5mgが11,544円、マンジャロ15mgが34,632円となります。3割負担ならそれぞれ約3,239円、約3,463円、約10,390円です。診察料・検査料・調剤料は含みません。
体重を減らす目的で使えますか?
日本でのトルリシティとマンジャロの効能又は効果は、どちらも2型糖尿病だけです。体重を減らす目的での使用は、いずれも承認されていません。臨床試験で体重の変化が報告されているのは、2型糖尿病の治療として行われた試験の結果です。なお、マンジャロと同じ成分(チルゼパチド)の肥満症の治療薬としては、別の製品(ゼップバウンド)が承認されていますが、マンジャロと併用することはできません。
旅行に持っていくときの保存は、2剤で違いますか?
違います。どちらも基本は2〜8℃での遮光保存(凍結不可)ですが、室温で保存する場合、トルリシティは遮光して30℃を超える場所を避けたうえで14日以内、マンジャロは30℃を超えない場所で外箱から出さずに保存して21日以内に使用することとされています。

11. まとめ

  • トルリシティ(デュラグルチド)とマンジャロ(チルゼパチド)は、どちらも週1回注射する2型糖尿病の治療薬です。日本での効能は2剤とも2型糖尿病だけです
  • トルリシティはGLP-1受容体に、マンジャロはGIP受容体とGLP-1受容体の両方に作用します。GIPはグルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチドの略です
  • 日本人636人を52週比べたSURPASS J-monoでは、HbA1cの低下はマンジャロのほうが1.09〜1.53%ポイント大きく、体重も大きく減った一方、副作用の発現頻度も高い結果でした(60.6%対37.1%、マンジャロ15mgの場合)
  • 心臓・血管について、SURPASS-CVOTはマンジャロがトルリシティ1.5mgに劣らないことを示しましたが、上回ることは示していません。日本ではどちらも心血管イベントの抑制は効能ではありません
  • 打ち忘れの対応は2剤で同じで、判断の基準は「次の予定日まであと何日あるか」です。室温で保存できる日数は、トルリシティ14日、マンジャロ21日と異なります
  • 4週分の薬剤費は、トルリシティ0.75mgとマンジャロ5mgではほぼ同じで、マンジャロを増量すると差が広がります

薬の開始・変更・中止は、必ず主治医と相談してください。この記事の内容は2026年9月時点のものです。

関連記事

参考文献

  1. 日本イーライリリー (2026a) 『マンジャロ皮下注2.5mg/5mg/7.5mg/10mg/12.5mg/15mgアテオス 電子添文(2026年9月改訂 第11版)』. Available at: https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/530471_2499422G1024_1_11 (Accessed: 24 September 2026).
  2. 日本イーライリリー (2026b) 『トルリシティ皮下注0.75mgアテオス/トルリシティ皮下注1.5mgアテオス 電子添文(2026年9月改訂 第12版)』. Available at: https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/530471_2499416G1029_1_24 (Accessed: 24 September 2026).
  3. Inagaki, N., Takeuchi, M., Oura, T., Imaoka, T. and Seino, Y. (2022) ‘Efficacy and safety of tirzepatide monotherapy compared with dulaglutide in Japanese patients with type 2 diabetes (SURPASS J-mono): a double-blind, multicentre, randomised, phase 3 trial’, The Lancet Diabetes & Endocrinology, 10(9), pp. 623–633. doi: 10.1016/S2213-8587(22)00188-7. Available at: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35914543/ (Accessed: 24 September 2026).
  4. Nicholls, S.J., Pavo, I., Bhatt, D.L., Buse, J.B., Del Prato, S., Kahn, S.E., Lincoff, A.M., McGuire, D.K., Miller, D., Nauck, M.A., Nishiyama, H., Nissen, S.E., Sattar, N., Weerakkody, G., Wiese, R.J., Zinman, B., Zoungas, S., Basile, J., Davies, M.J., Giorgino, F., Kellerer, M., Ji, L., Varkonyi, T., Menon, V., Broder, J.C., Herschtal, A. and D’Alessio, D. (2025) ‘Cardiovascular outcomes with tirzepatide versus dulaglutide in type 2 diabetes’, New England Journal of Medicine, 393(24), pp. 2409–2420. doi: 10.1056/NEJMoa2505928. Available at: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41406444/ (Accessed: 24 September 2026).
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  6. Billings, L.K., Winne, L., Sharma, P., Gomez-Valderas, E., Chivukula, K.K. and Kwan, A.Y.M. (2025) ‘Comparison of dose escalation versus switching to tirzepatide among people with type 2 diabetes inadequately controlled on lower doses of dulaglutide: a randomized clinical trial’, Annals of Internal Medicine, 178(5), pp. 609–619. doi: 10.7326/annals-24-03849. Available at: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40183678/ (Accessed: 24 September 2026).
  7. 日本糖尿病学会 (2023) 「2型糖尿病の薬物療法のアルゴリズム(第2版)」(コンセンサスステートメント策定に関する委員会)『糖尿病』66(10), pp. 715–733. doi: 10.11213/tonyobyo.66.715. Available at: https://www.jds.or.jp/uploads/files/article/tonyobyo/66_715.pdf (Accessed: 24 September 2026).
  8. 厚生労働省 (2026) 『薬価基準収載品目リスト及び後発医薬品に関する情報について』注射薬(令和8年8月13日収載品目を反映). Available at: https://www.mhlw.go.jp/topics/2026/04/tp20260401-01.html (Accessed: 24 September 2026).
この記事を監修したドクター

岩田 亮一

Ryoichi Iwata,MD,PhD

資格・所属学会

  • 医学博士
  • 日本脳神経血管内治療学会 専門医・指導医
  • 日本がん治療認定医機構 認定医
  • 日本認知症学会
  • 日本脳神経外科学会 専門医・指導医
  • 日本脳卒中学会 専門医・指導医
  • 日本頭痛学会 認定医・指導医
  • 日本抗加齢医学会

略歴

平成18年 4月
関西医科大学附属滝井病院 研修医
平成20年 4月
岸和田市民病院脳神経外科 医員
平成22年 4月
関西医科大学附属病院脳神経外科 病院助教
平成28年 4月
関西医科大学附属病院脳神経外科 助教
令和元年 9月
関西医科大学附属病院脳神経外科 講師
令和 2年 4月
関西医科大学附属病院脳神経外科 非常勤講師
令和 2年12月
いわた脳神経外科クリニック

授賞歴

平成27年 5月
第13回 櫻根啓子賞受賞
令和 2年 4月
第28回 佐々木千枝子賞
令和 2年
第26回 日本脳神経外科学会奨励賞受賞
この記事を監修したドクター

岩田 亮一

Ryoichi Iwata,MD,PhD

資格・所属学会

  • 医学博士
  • 日本脳神経血管内治療学会 専門医・指導医
  • 日本がん治療認定医機構 認定医
  • 日本認知症学会
  • 日本脳神経外科学会 専門医・指導医
  • 日本脳卒中学会 専門医・指導医
  • 日本頭痛学会 認定医・指導医
  • 日本抗加齢医学会

略歴

平成18年 4月
関西医科大学附属滝井病院 研修医
平成20年 4月
岸和田市民病院脳神経外科 医員
平成22年 4月
関西医科大学附属病院脳神経外科 病院助教
平成28年 4月
関西医科大学附属病院脳神経外科 助教
令和元年 9月
関西医科大学附属病院脳神経外科 講師
令和 2年 4月
関西医科大学附属病院脳神経外科 非常勤講師
令和 2年12月
いわた脳神経外科クリニック

授賞歴

平成27年 5月
第13回 櫻根啓子賞受賞
令和 2年 4月
第28回 佐々木千枝子賞
令和 2年
第26回 日本脳神経外科学会奨励賞受賞