「リトゥオ」という名前を、ここ1年ほどで目にするようになった方が多いと思います。韓国発の新しいスキンブースターで、日本でも扱うクリニックが増えてきました。
調べてみると、効果を強く打ち出した表現が目立ちます。一方で、この施術には、これまでの注入治療とは性質の異なる点がいくつかあります。そこを整理した情報は、多くありません。
この記事では、リトゥオが何を注入する施術なのか、これまでの注入と何が違うのかを整理したうえで、受けるかどうかを決める前に知っておいていただきたいことをお伝えします。回数や施術後の過ごし方といった実際の受け方については、診察の際にご説明します。
この記事でわかること
- リトゥオが何を注入する施術なのか
- ポリヌクレオチド製剤やヒアルロン酸と、どこが違うのか
- ヒアルロン酸と左右で比べた臨床試験で、何が示されたのか
- 溶かして戻せないこと、献血への影響など、選ぶ前に知っておきたいこと
- この製剤で報告されている血管の合併症
1. リトゥオとは何か
リトゥオ(Re2O)は、ヒト由来無細胞真皮マトリックス(hADM)を用いた注入製剤です。正式名称はElravie Re2Oで、韓国のL&C Bio社が製造しています。日本では「ブナジュ(BNAJU)」という名称でも扱われており、いずれも同じ製剤を指しています。
韓国では人体組織製品として食品医薬品安全処(MFDS)の規制下にあります(Lee et al. 2026)。医薬品や医療機器としての有効性・安全性の審査を経た承認とは、枠組みが異なります。
hADMとは、提供された皮膚を材料に、そこから細胞を取り除き、細胞が住んでいた「足場」の部分だけを残したものです(Correa-Araujo et al. 2023)。この足場は細胞外マトリックス(ECM)と呼ばれ、コラーゲン、エラスチン、グリコサミノグリカンといった成分でできています。
細胞そのものは含まれていないため、細胞を培養して用いるいわゆる細胞治療とは異なる施術です。
細胞を除くのは、免疫原性と拒絶反応のリスクを下げるためです(Lee et al. 2026)。ドナー組織の採取から加工・包装までの工程は、米国組織バンク協会(AATB)の指針に沿って行われたと報告されています。
なお、腱や腹壁の再建に用いる別のタイプの無細胞真皮マトリックスを対象とした評価では、脱細胞化の工程に伴うリスク(移植片の不全、予期しない免疫原性、感染の伝播、毒性)が検討され、総合的なリスクは低いと評価されたうえで、工程ごとの検証が必要とされています(López-Chicón et al. 2023)。
2. 何を注入するのか
皮膚の真皮は、コラーゲンなどの繊維が網の目のように組み合わさった構造をしています。年齢とともにこの構造が痩せていくことが、ハリの低下や毛穴の目立ちにつながります。
リトゥオの発想は、その構造成分そのものを補うというものです。
・コラーゲン 約80%
・エラスチン 約3%
・硫酸化グリコサミノグリカン 約0.4%
・残存するDNAは1mgあたり50ナノグラム未満
当院では、ハリや弾力の低下、毛穴の目立ちなどのご相談に対する選択肢の一つとして考えています。適しているかどうかは、肌の状態を診たうえで判断します。
公表されている臨床試験では、専用の注入器を用いて頬の真皮の中層に片側1.5mLが注入されています(Lee et al. 2026)。
3. 試験でわかったこと
効果について、公表されている臨床試験があります(Lee et al. 2026)。頬のキメの粗さが中等度の成人20名を対象に、顔の片側にリトゥオ、反対側にヒアルロン酸を注入して比べた試験です。どちらを注入したかは、評価する医師にも参加者にも分からない形で行われました。
1回注入したあと20週にわたって計測した結果、リトゥオを注入した側のほうが、複数の時点でより大きな改善を示しました。
・皮膚の密度
・皮膚の体積
・弾力
・シワの深さ
・毛穴の面積
・水分量
・バリア機能に関する指標
この試験では重篤な有害事象は観察されていません。あわせて行われた基礎研究では、ヒトの皮膚に注入した際に真皮内へ均一に分布すること、ラットで線維芽細胞が入り込んで局所的に新しいコラーゲンがつくられることなども報告されています。
ただし、読み方には次の点をふまえてください。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 参加人数 | 20名と小規模です |
| 期間 | 1回の注入から20週までで、それ以降のデータはありません |
| 比較の条件 | リトゥオ側は、対照と同じヒアルロン酸製剤に生理食塩水などを加えて溶いたものを注入しています。「リトゥオ+ヒアルロン酸」と「ヒアルロン酸のみ」の比較です |
| 利益相反 | 著者のうち1名が、この製品の開発アドバイザーを務めています |
顔の左右で比べる方法は、同じ人の同じ条件で比較できるため、少人数でも差を捉えやすい設計です。一方で、人数と期間の制約は残ります。
4. 既存の注入との違い
当院では肌育注射のメニューとして、ポリヌクレオチド製剤やヒアルロン酸に加えて、リトゥオ(Re2O)もお取り扱いしています。これまでの製剤とどう違うのかを整理します。
| リトゥオ(hADM) | ポリヌクレオチド(PN) | ヒアルロン酸 | |
|---|---|---|---|
| 主成分の由来 | ヒトの皮膚組織 | サケ・マス類のDNA断片 | 主に微生物発酵 |
| 考え方 | 構造成分そのものを補う | 自分の細胞のはたらきを促す | かさを出す・保水する |
| 主な成分 | コラーゲン、エラスチン、GAG | ポリヌクレオチド | ヒアルロン酸 |
| 溶かして戻せるか | 戻せない | 戻せない | ヒアルロニダーゼで溶解できる |
最後の行が、実務上いちばん大きな違いです。ヒアルロン酸は、しこりや左右差が出たとき、あるいは血管に入ってしまったときに、ヒアルロニダーゼという酵素で溶かすことができます。リトゥオにはその手段がありません。この点は後ほど詳しくお伝えします。
5. 知っておきたいこと
ここが、この記事でいちばんお伝えしたい部分です。判断に必要だと当院が考える点をまとめました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 溶かして戻せない | hADM成分はヒアルロニダーゼでは溶解できません。注入物が血管に入った場合、皮膚の壊死、まれに脳梗塞や失明といった重い合併症が起こりうることが、注入治療全般について知られています(Sung et al. 2026)。ヒアルロン酸のように溶かして元に戻す対応が取れないため、対応がより難しくなる可能性があります |
| 献血への影響 | ヒト由来の組織を用いるため、施術後は献血をお断りされる可能性があります。実際の可否は日本赤十字社にご確認ください |
| 救済制度 | 国内未承認の製剤を用いるため、重篤な健康被害が生じても、国の医薬品副作用被害救済制度の給付対象にはなりません |
| 感染性因子 | ドナーの選定・検査・細胞除去といった工程を経ても、免疫反応や、既知・未知の感染性因子が伝わる危険を完全には否定できません。症状が遅れて出ることもあります |
1つ目について、実際の報告があります。2026年、この製剤の注入後に血管障害が生じた症例が学術誌に報告されました(Sung et al. 2026)。額と両頬に注入を受けた44歳の女性が、2日後から痛みや赤み、膿疱を生じた例です。製剤は生理食塩水と非架橋ヒアルロン酸で溶いたうえで注入されており、著者らは、非架橋ヒアルロン酸は血管内から早く消えるため主因とは考えにくく、この製剤が血管を詰まらせた可能性があると考察しています。ヒアルロニダーゼ1,250単位を注射しても症状は持続し、左の滑車上動脈の領域の血管障害が疑われました。高気圧酸素療法や血管拡張薬などによる治療を経て、9週間後に赤みは消えたものの、萎縮性の瘢痕が残っています。
著者らは「ヒアルロン酸フィラーと異なり、この製剤はヒアルロニダーゼで溶解されないため、血管障害が起きた場合の対応がより難しくなる可能性がある」と述べ、この新しい生体材料を用いる際には注意が必要であると結論しています。
1例の報告であり、頻度が高いという意味ではありません。ただし、起こりうることとして知ったうえで選んでいただきたいと考えています。
献血については、日本赤十字社が、輸血や臓器移植を受けた方に献血をご遠慮いただいています。現在の検査法では検出できない未知のウイルス感染の可能性を考慮し、輸血の安全性を高めるための措置とされています(日本赤十字社 n.d.)。ヒト由来の組織を注入する施術が同じ扱いになるかは、公表されている基準に明記がありません。献血を続けたいとお考えの方は、事前に献血ルームにご確認ください。
救済制度は、承認を受けた医薬品等が適正に使用された場合の健康被害を救済する仕組みで、対象とならない場合が定められています(医薬品医療機器総合機構 n.d.)。また厚生労働省も、個人輸入された医薬品による健康被害は救済対象とならない旨を示しています(厚生労働省 n.d.)。当院では、本施術は給付対象にならないものとしてご説明しています。
6. どう選ぶか
ここまで、良い面より注意点を多くお伝えしてきました。不安に感じられたかもしれません。
ただ、ヒト由来の組織を体に入れるという選択は、ご本人が納得したうえでしていただくべきものだと考えています。そのために必要な情報は、先にお渡ししておきたいと思っています。
リトゥオが向いているかどうかは、肌の状態とご希望によって変わります。同じ「ハリを出したい」というご相談でも、ポリヌクレオチド製剤のほうが適している場合もありますし、肌育注射の他の選択肢が合うこともあります。
まずは状態を見せていただき、選択肢を並べてご説明します。そのうえでお決めいただければと思います。
リトゥオ(Re2O)を含む各製剤の費用は、肌育注射のページに掲載しています。施術回数は1か月おきに3回が標準的な目安で、必要な回数は診察のうえで決めます。当院(東大阪市・布施)では、肌育注射のメニューとしてご相談を承っています。
・本製剤は日本国内で医薬品・医療機器・再生医療等製品のいずれとしても承認を受けていません。医師個人の責任において個人輸入により入手し、使用しています。
・個人輸入した医薬品等には健康被害のリスクがあります。厚生労働省「医薬品等を海外から購入しようとされる方へ」もあわせてご確認ください(厚生労働省 n.d.)。
・同一の成分を有する国内承認の医薬品・医療機器はありません。なお、しわの改善を目的とした注入材としては、国内で承認されたヒアルロン酸製剤があります。考え方が異なるため、どちらが適しているかは診察のうえでご説明します。
・本製剤は韓国において人体組織製品として食品医薬品安全処(MFDS)の規制下にあり、医薬品・医療機器としての有効性・安全性の審査を経た承認ではありません。公表されている臨床試験の追跡期間は20週までで、長期の安全性を評価した報告は確認できていません。国内での承認審査も経ていないため、未知のリスクを完全には否定できません。
・国内未承認の製剤を用いるため、重篤な健康被害が生じても国の医薬品副作用被害救済制度の給付対象にはなりません。
・ヒト由来の組織を用いるため、施術後は献血をお断りされる可能性があります。献血を続けたい方は事前に献血ルームにご確認ください。
・適応とならない場合があります。診察の際に確認します。
・効果の程度・発現時期・持続期間には個人差があり、効果を保証するものではありません。
よくあるご質問
Q. ヒト由来と聞くと不安です。大丈夫でしょうか。
Q. 誰の皮膚が使われているのですか。
Q. ヒアルロン酸のように、あとから溶かせますか。
Q. 施術後、献血はできなくなりますか。
Q. どんな効果が期待できますか。
Q. ポリヌクレオチド製剤とどちらがよいですか。
Q. 何回受ければよいですか。
Q. ダウンタイムはどのくらいですか。
まとめ
- リトゥオはヒト由来無細胞真皮マトリックスを注入し、肌の構造成分そのものを補う施術です
- ヒアルロン酸と左右で比べた試験では、密度・弾力・シワ・毛穴などでより大きな改善が示されました(20名・1回注入・20週)
- 効果の程度や持続には個人差があり、効果を保証するものではありません
- この製剤の注入後に血管障害が生じた症例が、学術誌に報告されています
- ヒアルロン酸と違い、ヒアルロニダーゼで溶かして戻すことができません
- 施術後の献血は、お断りされる可能性があります
- 国内未承認であり、健康被害が生じても国の救済制度の給付対象になりません
新しい施術には期待が集まりますが、選ぶかどうかを決めるのはご本人です。判断に必要な材料をそろえてお渡しすることが、私たちの役割だと考えています。
気になることがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。
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参考文献
- 医薬品医療機器総合機構 n.d., ‘医薬品副作用被害救済制度の給付対象’, viewed 16 September 2026, <https://www.pmda.go.jp/relief-services/adr-sufferers/0011.html>.
- 厚生労働省 n.d., ‘医薬品等を海外から購入しようとされる方へ’, viewed 16 September 2026, <https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/kojinyunyu/index.html>.
- 日本赤十字社 n.d., ‘輸血歴・臓器移植歴のある方’, viewed 16 September 2026, <https://www.jrc.or.jp/donation/about/refrain/detail_05/>.
- Correa-Araujo, L, Prieto-Abello, L, Lara-Bertrand, A, Medina-Solano, M, Guerrero, L, Camacho, B & Silva-Cote, I 2023, ‘Bioengineered skin constructs based on mesenchymal stromal cells and acellular dermal matrix exposed to inflammatory microenvironment releasing growth factors involved in skin repair’, Stem Cell Research & Therapy, vol. 14, no. 1, 306, DOI 10.1186/s13287-023-03535-w, viewed 16 September 2026, <https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37880776/>.
- Lee, YI, Chau, NH, Nguyen, NH, Ham, S, Baek, Y, Kim, J & Lee, JH 2026, ‘Injectable particulated human acellular dermal matrix booster for skin restoration: an integrated randomized, split-face, double-blinded clinical trial and preclinical study’, International Journal of Molecular Sciences, vol. 27, no. 5, 2193, DOI 10.3390/ijms27052193, viewed 16 September 2026, <https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC12985180/>.
- López-Chicón, P, Pérez, ML, Castells-Sala, C, Piteira, AR, Fariñas, O, Tabera, J & Vilarrodona, A 2023, ‘Quality by design: development of safe and efficacious full-thickness acellular dermal matrix based on EuroGTPII methodologies’, Therapeutics and Clinical Risk Management, vol. 19, pp. 567-578, DOI 10.2147/TCRM.S410574, viewed 16 September 2026, <https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37425344/>.
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