「マンジャロとゼップバウンドは何が違うの?」というご質問をいただくことがあります。
結論からお伝えすると、2つのお薬は同じ成分「チルゼパチド」を含んでいます。違いは、国内で承認されている病気です。マンジャロは2型糖尿病、ゼップバウンドは肥満症と中等症以上の閉塞性睡眠時無呼吸症候群の治療薬として承認されています。承認されている病気が違うため、対象となる人、用量、使える医療機関も異なります。
この記事でわかること
- 成分チルゼパチドが、体のどこに作用するのか
- マンジャロとゼップバウンドの違い(承認された病気・対象となる人・用量・医療機関)
- 2型糖尿病の人と、肥満の人を対象にした臨床試験の結果
- 使い方と、打ち忘れたとき・保管の決まり
1. チルゼパチドとは
チルゼパチドは、GIP受容体とGLP-1受容体の両方に作用するお薬の成分です。薬の分類は「持続性GIP/GLP-1受容体作動薬」で、週1回の皮下注射で使います(日本イーライリリー, 2026a)。
GIPとGLP-1は、食事をとると消化管から分泌されるホルモンで、まとめてインクレチンと呼ばれます。どちらも、血糖値が高いときに膵臓からのインスリン分泌を促す働きをもっています。
それまでのGLP-1受容体作動薬(セマグルチドなど)がGLP-1受容体だけに作用するのに対し、チルゼパチドは1つの分子で2つの受容体に作用する点が特徴です。
作用のしくみ
- 血糖値に応じてインスリン分泌を促す
- 脳(中枢神経系)に作用し、食欲を調節する
- 血糖値に応じてインスリン分泌を促す
- 脳(中枢神経系)に作用し、食欲を調節する
- 脂肪細胞に作用し、脂質などの代謝を高める
出典:各お薬の電子添文「作用機序」(日本イーライリリー, 2026a; 2026b)。インスリン分泌はマンジャロ、食欲の調節と脂質などの代謝はゼップバウンドの電子添文の記載です。電子添文では、これらの作用によって体重減少作用を示すと「考えられる」とされています。
2. 2つの薬の違い
マンジャロとゼップバウンドは同じ成分ですが、それぞれ別の臨床試験で効果と安全性が確認され、別のお薬として承認されています(日本肥満学会, 2025)。
| マンジャロ | ゼップバウンド | |
|---|---|---|
| 成分 | チルゼパチド | チルゼパチド |
| 国内で承認された病気 | 2型糖尿病 | 肥満症/中等症以上の閉塞性睡眠時無呼吸症候群(いずれも条件あり) |
| 国内承認 | 2022年9月 | 2024年12月(2026年5月に効能を追加) |
| 開始用量 | 週1回2.5mg | 週1回2.5mg |
| 通常の用量 | 週1回5mg(効果不十分なら4週間以上の間隔で2.5mgずつ増量可、最大15mg) | 4週間の間隔で2.5mgずつ増量し、肥満症は週1回10mg、睡眠時無呼吸症候群は週1回15mg |
| 使える医療機関 | ― | 最適使用推進ガイドラインの要件を満たす医療機関(肥満症と睡眠時無呼吸症候群で、要件は別々に定められている) |
対象となる人
ゼップバウンドの肥満症への使用は、高血圧・脂質異常症・耐糖能障害(2型糖尿病、耐糖能異常など)のいずれかがあり、食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られない人で、次のどちらかに当てはまる場合に限られています(日本イーライリリー, 2026b)。
- BMIが27以上で、肥満に関連する健康障害が2つ以上ある
- BMIが35以上
ただし、最適使用推進ガイドラインと保険給付の対象は、高血圧・脂質異常症・2型糖尿病のいずれかがある場合です(厚生労働省, 2026a; 日本イーライリリー, 2026b)。
また、2026年5月に追加された中等症以上の閉塞性睡眠時無呼吸症候群への使用は、BMIが27以上の場合に限られています(田辺ファーマ・日本イーライリリー, 2026)。
使える医療機関の要件
ゼップバウンドは、肥満症・睡眠時無呼吸症候群のどちらの使用についても、国が定める最適使用推進ガイドラインの対象で、要件は病気ごとに別々に定められています。肥満症では、内科・循環器内科・内分泌内科・代謝内科・糖尿病内科のいずれかを標榜する保険医療機関で、関連学会の専門医が1人以上常勤していること、学会の教育研修施設に認定されていること、常勤の管理栄養士が栄養指導を行えることなどの要件を満たす施設で使用されます(厚生労働省, 2026a)。肥満症のガイドラインでは、効能・効果以外の美容・痩身・ダイエットなどの目的では使用しないこととされています。
使用前の条件と期間
最適使用推進ガイドラインでは、ゼップバウンドの肥満症への使用について、次のような決まりも設けられています(厚生労働省, 2026a)。
- 使い始める前に、その施設で6か月以上、食事療法・運動療法を行い(2か月に1回以上、管理栄養士の栄養指導を受ける)、それでも十分な効果が得られないこと
- 合併している高血圧・脂質異常症・2型糖尿病に対して、薬による治療を含む適切な治療を受けていること
- 使える期間は最大72週間。3〜4か月使っても改善の傾向がみられない場合は中止する
睡眠時無呼吸症候群への使用については、別の最適使用推進ガイドラインで、使い始める前に3か月以上の食事療法・運動療法を行うこと、使える期間は最大52週間であることなどが定められています(厚生労働省, 2026b)。
一緒には使わない
同じ成分を含むため、マンジャロとゼップバウンドを併用することはできません。ゼップバウンドの電子添文では、ほかのGLP-1受容体作動薬などとも併用しないこととされています(日本イーライリリー, 2026a; 2026b)。
3. 臨床試験の結果
チルゼパチドは、対象となる人ごとに大規模な臨床試験が行われてきました。2型糖尿病の人を対象にしたSURPASS試験と、肥満または過体重の人を対象にしたSURMOUNT試験が代表的です。ここでは、それぞれの代表的な試験を1つずつ紹介します。
SURPASS-2試験(2型糖尿病の人が対象)
2型糖尿病の成人1,879人を、チルゼパチド5mg・10mg・15mgと、セマグルチド1mgに分け、40週間比較した試験です(Frías et al., 2021)。
- HbA1cの変化:チルゼパチド −2.01〜−2.30ポイント、セマグルチド −1.86ポイント
- 体重:セマグルチドと比べて、5mgで1.9kg、10mgで3.6kg、15mgで5.5kg多く減少
- 多かった有害事象:吐き気(17〜22%)、下痢(13〜16%)、嘔吐(6〜10%)などの消化器症状で、多くは軽度〜中等度
SURMOUNT-1試験(肥満または過体重の人が対象)
糖尿病のない成人2,539人(BMI30以上、またはBMI27以上で体重に関連する合併症が1つ以上。開始時の平均体重104.8kg・平均BMI38.0)を、チルゼパチド5mg・10mg・15mgとプラセボ(偽薬)に分け、72週間比較した試験です(Jastreboff et al., 2022)。
- 72週時点の体重の変化:5mg −15.0%、10mg −19.5%、15mg −20.9%、プラセボ −3.1%
- 多かった有害事象:消化器症状で、多くは軽度〜中等度、主に増量中に起こった
- 有害事象による投与中止:5mg 4.3%、10mg 7.1%、15mg 6.2%、プラセボ 2.6%
いずれも、試験の対象となった方(2型糖尿病の人、または肥満・過体重の人)で得られた平均の結果です。そのほかの試験の結果と、報告されている副作用については、「チルゼパチドの効果と安全性」の記事で詳しく解説しています。
4. 使い方
どちらのお薬も、週1回、同じ曜日に皮下注射します。週1回2.5mgから始めて、段階的に増量します(2章の表)。吐き気などの胃腸の症状で続けるのがつらい場合は、医師の判断で減量したり、増量を先に延ばしたりします(日本イーライリリー, 2026a; 2026b)。
注射する場所
お腹・太もも・上腕のいずれかに注射します。同じ部位の中でも、毎回注射する場所を変えることが定められています(日本イーライリリー, 2026a; 2026b)。
打ち忘れたとき
| 次の予定日までの時間 | 対応 |
|---|---|
| 3日間(72時間)以上ある | 気づいた時点ですぐに注射し、その後はもとの曜日に戻る |
| 3日間(72時間)未満 | その回は注射せず、次のもとの曜日に注射する |
曜日を変えるとき
前回の注射から少なくとも3日間(72時間)以上あけてください。
保管のしかた
- 冷蔵庫(2〜8℃)で、光を避けて保管します。凍らせてしまったものは使えません。
- 室温で保管する場合は、30℃を超えない場所で外箱に入れたまま保管し、21日以内に使います。
出典:各お薬の電子添文(日本イーライリリー, 2026a; 2026b)。2つのお薬で同じ内容です。
5. よくある質問
マンジャロとゼップバウンドは同じ薬ですか?
ゼップバウンドは誰でも使えますか?
2つを一緒に使うことはできますか?
副作用に違いはありますか?
6. まとめ
- マンジャロとゼップバウンドは、同じ成分チルゼパチドを含むお薬です
- 国内で承認されている病気が異なり、マンジャロは2型糖尿病、ゼップバウンドは肥満症・中等症以上の閉塞性睡眠時無呼吸症候群です
- 承認された病気が違うため、対象となる人・用量・使える医療機関も異なります
- 副作用は成分が同じため共通しています
どちらも医師の診察のもとで使うお薬です。使用については、医師にご相談ください。
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参考文献
- Frías, J.P. et al. (2021) ‘Tirzepatide versus Semaglutide Once Weekly in Patients with Type 2 Diabetes’, New England Journal of Medicine, 385(6), pp. 503–515. doi: 10.1056/NEJMoa2107519. Available at: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34170647/ (Accessed: 22 September 2026).
- Jastreboff, A.M. et al. (2022) ‘Tirzepatide Once Weekly for the Treatment of Obesity’, New England Journal of Medicine, 387(3), pp. 205–216. doi: 10.1056/NEJMoa2206038. Available at: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35658024/ (Accessed: 22 September 2026).
- 日本イーライリリー (2026a) 『マンジャロ皮下注アテオス 電子添文(2026年9月改訂 第11版)』. Available at: https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00070640.pdf (Accessed: 22 September 2026).
- 日本イーライリリー (2026b) 『ゼップバウンド皮下注アテオス 電子添文(2026年9月改訂 第6版)』. Available at: https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00071592.pdf (Accessed: 22 September 2026).
- 厚生労働省 (2026a) 『最適使用推進ガイドライン チルゼパチド(販売名:ゼップバウンド皮下注)~肥満症~』令和7年3月(令和8年5月改訂). Available at: https://www.pmda.go.jp/files/000280607.pdf (Accessed: 22 September 2026).
- 厚生労働省 (2026b) 『最適使用推進ガイドライン チルゼパチド(販売名:ゼップバウンド皮下注)~閉塞性睡眠時無呼吸症候群~』令和8年5月. Available at: https://www.pmda.go.jp/files/000280608.pdf (Accessed: 22 September 2026).
- 日本肥満学会 (2025) 『肥満症治療薬の安全・適正使用に関するステートメント』2025年4月10日改訂. Available at: https://www.jasso.or.jp/data/Introduction/pdf/academic-information_statement_20250410.pdf (Accessed: 22 September 2026).
- 田辺三菱製薬 (2022) 『世界初の持続性GIP/GLP-1受容体作動薬「マンジャロ」2型糖尿病に対する国内製造販売承認を取得』2022年9月26日. Available at: https://www.tanabe-pharma.com/ja/news/MTPC220926.html (Accessed: 22 September 2026).
- 日本イーライリリー・田辺三菱製薬 (2025) 『持続性GIP/GLP-1受容体作動薬「ゼップバウンド®」薬価基準収載ならびに発売日のお知らせ』2025年3月19日. Available at: https://mediaroom.lilly.com/PDFFiles/2025/25-12_com.jp.pdf (Accessed: 22 September 2026).
岩田 亮一
Ryoichi Iwata,MD,PhD
資格・所属学会
- 医学博士
- 日本脳神経血管内治療学会 専門医・指導医
- 日本がん治療認定医機構 認定医
- 日本認知症学会
- 日本脳神経外科学会 専門医・指導医
- 日本脳卒中学会 専門医・指導医
- 日本頭痛学会 認定医・指導医
- 日本抗加齢医学会
略歴
- 平成18年 4月
- 関西医科大学附属滝井病院 研修医
- 平成20年 4月
- 岸和田市民病院脳神経外科 医員
- 平成22年 4月
- 関西医科大学附属病院脳神経外科 病院助教
- 平成28年 4月
- 関西医科大学附属病院脳神経外科 助教
- 令和元年 9月
- 関西医科大学附属病院脳神経外科 講師
- 令和 2年 4月
- 関西医科大学附属病院脳神経外科 非常勤講師
- 令和 2年12月
- いわた脳神経外科クリニック
授賞歴
- 平成27年 5月
- 第13回 櫻根啓子賞受賞
- 令和 2年 4月
- 第28回 佐々木千枝子賞
- 令和 2年
- 第26回 日本脳神経外科学会奨励賞受賞
