「マンジャロで急性膵炎になることがある」——そう書かれた記事やSNSの投稿を見て、不安になった方は少なくないと思います。膵炎という言葉の響きは、決して軽くありません。
この記事では、電子添文と査読を経た論文にもとづいて、数字が何を指しているのかを整理します。よく見かける「0.1%未満」と、論文に出てくる数字は、同じものを数えていません。ここを分けないと、結論を読み違えます。
この記事は、マンジャロの電子添文(2026年9月改訂・第11版)と査読を経た論文、公的資料にもとづく一般的な医療情報で、診断・治療の代わりになるものではありません。当院が痩身を目的として行うマンジャロの処方は、国内で承認されていない使い方(適応外使用)です。費用などの重要事項は、記事内の「マンジャロ(チルゼパチド)による自由診療について」に記載しています。
この記事の結論
- 電子添文の「0.1%未満」は副作用としての頻度です。論文に出てくる数字は有害事象で、数え方が違います。
- チルゼパチドの試験をまとめた解析では、急性膵炎は0.22%と報告されています。用量による差はみられていません。
- GLP-1受容体作動薬全体でみると、増えるという報告と、差がないという報告の両方があります。決着していません。
- 注目されているのは、薬が直接というより急な体重減少と胆石を介した道すじです。
- 嘔吐をともなう持続的な激しい腹痛があらわれたときは、使用を中止して速やかに受診してください。
1. まず結論から
マンジャロの電子添文では、急性膵炎は重大な副作用に位置づけられ、頻度は0.1%未満とされています(日本イーライリリー, 2026)。まれではありますが、重い病気になりうるため注意が必要、という扱いです。
電子添文には、次のようにも書かれています。
電子添文の記載(11.1.2)
嘔吐を伴う持続的な激しい腹痛等の異常が認められた場合には、本剤の投与を中止し、適切な処置を行うこと。また、膵炎と診断された場合は、再投与は行わないこと。
「頻度はまれだが、起きたときは見逃さない」。この2つを両立させることが大切です。
2. 数字の読み方
ここがこの記事でいちばん大事な部分です。インターネット上では、性質の違う数字が並べられていることがあります。
| 数字 | 何を数えたものか |
|---|---|
| 電子添文の「0.1%未満」 | 副作用の頻度。薬との関係が否定できないものを数えています |
| 論文の「0.22%」 | 有害事象の発生率。薬との関係があるかどうかを問わず、試験中に起きた出来事を数えています |
有害事象のほうが、数え方の網が広いぶん数字は大きく出ます。この2つを並べて「どちらも0.1%未満」と書くのは誤りです。
3. なぜ心配されるか
頻度はまれなのに、なぜマンジャロと膵炎がこれほど結びつけて語られるのでしょうか。理由は3つあります。
インクレチン薬への歴史的な警戒
マンジャロと同じ仕組みを使う薬では、登場した当初から膵炎が「この系統の注意点」として扱われてきました。心血管アウトカム試験をまとめた解析では、インクレチン関連薬で急性膵炎のリスクが上がるとはいえないと報告されていますが(Singh et al., 2020)、警戒のまなざしは続いています。
急な体重減少と胆石
ここが機序として注目されている部分です。急性膵炎の原因として胆石は代表的なもので、急に大きく体重が減ると胆石ができやすくなることが知られています。詳しくは第6章で扱います。
個々の症例報告
「使い始めた後に膵炎を起こした」という個別の報告もあります。注意を促すうえで貴重ですが、一例ずつの経過から「本当に薬が原因だったか」を確定するのは難しく、もともと胆石など他の要因が隠れていた可能性も残ります。集団全体で増えているかどうかは、次の章のデータで判断する必要があります。
4. 研究でわかること
チルゼパチドの試験をまとめた解析
17の臨床試験(14,645名)をまとめた解析では、膵炎の起こりやすさはプラセボと同等で、インスリンや他のGLP-1受容体作動薬と比べても差がなかったと報告されています(Kamrul-Hasan et al., 2024)。ただし同じ解析では、膵アミラーゼとリパーゼがプラセボより有意に大きく上昇したことも報告されています。
19の臨床試験(15,471名)を対象とした別の解析では、急性膵炎を起こした人は0.22%で、用量による差(用量反応)はみられませんでした(Benny et al., 2026)。
膵酵素の上昇は、急性膵炎そのものとは別のものです。電子添文でも、膵アミラーゼ増加・リパーゼ増加は「その他の副作用」の臨床検査の項に記載されており、重大な副作用の急性膵炎とは区別されています。
意見が分かれている点
GLP-1受容体作動薬という系統全体でみた場合、報告は一致していません。
| 報告 | 結果 |
|---|---|
| Wen et al., 2025 (62試験・66,232例) | GLP-1受容体作動薬で膵炎が増える(相対危険度1.44、95%信頼区間1.09〜1.89) |
| Singh et al., 2020 (心血管アウトカム試験) | インクレチン関連薬で増えるとはいえない |
| Kamrul-Hasan et al., 2024 (チルゼパチド17試験) | プラセボと同等 |
したがって、「クラスとしてリスクは上がらない」と言い切ることはできません。チルゼパチドに限った解析ではプラセボと同等という結果ですが、系統全体では増加を示す報告もある、というのが現時点での正確な状況です。
5. 日本人のデータ
日本人を対象にした試験でも、膵臓に関する項目が報告されています。
国内第III相試験
SURPASS J-mono(日本人の2型糖尿病636名/Inagaki et al., 2022):膵臓に関連する有害事象は11件で、いずれも症状のないものでした。急性膵炎と確定されたのは15mg群の1件です。
SURPASS J-combo(Kadowaki et al., 2022):膵臓に関連する有害事象は7件で、いずれも症状のないもの。急性膵炎と確定された事象はありませんでした。
※この件数の内訳は、論文本文ではなく製造販売元が医療関係者向けに公開している資料で確認したものです(日本イーライリリー, 2026b)。
日本人の肥満症の方を対象にした試験(SURMOUNT-J/Kadowaki et al., 2025)も行われています。ただしこの試験の対象は肥満症の方(糖尿病のある方は除外)225名で、美容を目的として使う方を対象にしたものではありません。
これらは件数が少なく、観察期間も限られています。「まれである」ことははっきりしていても、「起こらない」と言えるわけではありません。
6. 減量ペースと胆石
急性膵炎の原因として、日本の全国調査では次のように報告されています。
日本の急性膵炎の原因(2021年全国調査)
アルコール31.2%、胆石22.5%、原因が特定できないもの22.1%(Tanaka et al., 2025)
胆石は主要な原因の1つです。そして、減量そのものが胆道の病気のリスクを上げることが報告されています。GLP-1受容体作動薬の76試験(103,371例)をまとめた解析では、減量を目的とした試験で胆のう・胆道の病気が2.29倍と報告されました(He et al., 2022)。
この分野の総説も、薬が直接膵炎を起こすという考え方よりも、減量の速さを介した道すじに注目しています。減量のペースが速いほど胆石ができやすくなる、という整理です(Mehta et al., 2025)。
つまり、気をつけるべきは薬の量そのものより、どれだけ急に、どれだけ大きく体重を減らすかです。自己流で一気に減らそうとせず、医師と相談しながらペースを決めることに意味があります。
7. 受診の目安
この症状があるときは、使用を中止して受診してください
嘔吐をともなう、持続的な激しい腹痛(電子添文 8.6項・11.1.2項)
自己判断で様子を見ず、速やかに医療機関にご相談ください。電子添文では、膵炎と診断された場合は再投与を行わないとされています。
もともと膵炎を起こしたことがある方は、電子添文で注意が必要な方として挙げられています(9.1.2項)。胆石がある方、お酒の量が多い方も、はじめる前に必ず医師にお伝えください。
そのほかの重大な副作用
急性膵炎以外にも、頻度は高くありませんが次の重大な副作用が報告されています。
| 副作用 | 頻度 |
|---|---|
| 低血糖 | 頻度不明 |
| 急性膵炎 | 0.1%未満 |
| 胆嚢炎・胆管炎・胆汁うっ滞性黄疸 | 胆管炎0.1%未満、他は頻度不明 |
| アナフィラキシー・血管性浮腫 | いずれも頻度不明 |
| イレウス | 頻度不明 |
このほか、5%以上の方にみられる副作用として、悪心(吐き気)、嘔吐、下痢、便秘、腹痛、消化不良、食欲減退が記載されています。
気になる症状や、ご自身の体質のことは医師へ
膵炎の既往や胆石がある方、お酒の量が多い方は、はじめる前にお伝えください。痩身を目的としたマンジャロの処方は、国内で承認されていない使い方(適応外使用)です。
無理な勧誘は一切ありません
8. 2026年6月の動き
2026年6月、マンジャロをめぐって行政と学会から相次いで発信がありました。何が問題とされたのかを整理します。
| 日付 | 内容 |
|---|---|
| 6月5日 | 上野賢一郎厚生労働大臣が記者会見で「一般に、マンジャロを個人間で売買することは違法」と述べました |
| 6月8日 | 日本くすりと糖尿病学会が、適正使用と違法流通の防止を求める注意喚起を出しました |
| 6月16日 | 厚生労働省が、GLP-1受容体作動薬等の適正使用についての通知を出しました |
このうち6月16日の通知は、「一部の医療機関において2型糖尿病及び肥満症の治療目的以外の美容や痩身を目的に使用されている実態がある」として、医療機関の使用についても言及しています。あわせて、虚偽・誇大にあたる医療広告の禁止にも触れています。
個人間の売買や無診察での使用が問題とされているのは事実ですが、医療機関で行われる痩身目的の使用そのものも、通知が名指しで取り上げている対象です。「医師の管理下だから別」と切り分けられる話ではありません。
当院は、この点を踏まえたうえで、適応外使用であることとリスクを説明し、診察のうえで処方の可否と量を判断しています。厚生労働省は、2型糖尿病以外の目的で使用した場合の有効性・安全性は確認されていないとしています。
よくある質問
急性膵炎になる確率はどのくらいですか?
電子添文では副作用として「0.1%未満」とされています。チルゼパチドの19試験(15,471名)をまとめた解析では、有害事象としての急性膵炎は0.22%でした。この2つは数え方が違うので、同じ数字として比べられません。いずれにせよまれですが、起こらないわけではありません。
どんな症状が出たら受診すべきですか?
嘔吐をともなう、持続的な激しい腹痛です。自己判断で様子を見ず、使用を中止して速やかに医療機関にご相談ください。電子添文では、膵炎と診断された場合は再投与を行わないとされています。
膵炎や胆石があっても使えますか?
膵炎を起こしたことがある方は、電子添文で注意が必要な方として挙げられています。胆石がある方、お酒の量が多い方も含めて、はじめる前に必ず医師にお伝えください。診察のうえで判断します。
減量のペースは関係ありますか?
関係があると考えられています。急に大きく体重が減ると胆石ができやすくなり、胆石は急性膵炎の主要な原因の1つです。GLP-1受容体作動薬の76試験をまとめた解析では、減量を目的とした試験で胆のう・胆道の病気が2.29倍と報告されています。ペースは医師と相談して決めてください。
まとめ
- 電子添文の「0.1%未満」は副作用としての頻度、論文の「0.22%」は有害事象の発生率です。数え方が違うので、同じ数字として比べられません。
- チルゼパチドに限った解析ではプラセボと同等ですが、GLP-1受容体作動薬全体では増加を示す報告もあり、決着していません。
- 注目されているのは、薬が直接というより、急な体重減少と胆石を介した道すじです。減量のペースは医師と相談して決めてください。
- 嘔吐をともなう持続的な激しい腹痛があらわれたら、使用を中止して速やかに受診してください。
- 2026年6月の厚生労働省の通知は、医療機関での痩身目的の使用についても言及しています。「医師の管理下だから別」と切り分けられる話ではありません。
不安なときほど、断片的な情報ではなく、出どころのはっきりした情報に立ち返ることが力になります。気になることは、診察の際にお尋ねください。
マンジャロ(チルゼパチド)による自由診療について
当院が痩身を目的として行うマンジャロの処方は、国内で承認されていない使い方(適応外使用)です。ご検討の前に、以下を必ずお読みください。
治療の内容・期間・回数
週1回、ご自身で皮下注射します(院内での注射も可能です)。2.5mgから始め、4週間後に5mgへ増量します。当院でお出しする用量は2.5mg・5mg・7.5mg・10mgです。あらかじめ決まった治療期間はありません。減った体重を保つには継続が必要になる場合があり、中止したあとに体重が戻ることがあります。続けるかどうかは、効果と副作用を確認しながら医師とご相談のうえ決めます。
費用(自由診療・保険適用外)
- マンジャロ 1本 3,250円〜12,980円(税込/用量とご購入本数により異なります)
- 初診料 3,300円(施術を受けていただく場合は無料)
- 採血(ご希望の方のみ)4,400円/院内での注射 2,200円
- オンライン診療の送料 10本以下 1,980円/12本以上 3,000円(目安)
1回のお会計はお薬代で3,980円(2.5mgを1本)〜126,000円(10mgを12本まとめて)です。用量別・本数別の価格は料金ページをご覧ください。
適応外使用に関する情報
未承認の使い方です。マンジャロ(一般名:チルゼパチド)は2型糖尿病の治療薬として国内で承認されています。痩身・ダイエット目的での処方は国内で承認されていません。
入手経路。国内の医薬品卸売業者から、国内で承認された医薬品を仕入れています。個人輸入は行っていません。
国内の承認医薬品等。同一成分(チルゼパチド)の肥満症治療薬が国内で承認されています。使用できる医療機関・対象者に要件があり、美容・痩身目的では使用できません。
諸外国の情報。チルゼパチド製剤は米国(体重管理の製剤は2023年11月8日承認)および欧州(2022年9月15日承認、体重管理の効能は2023年12月11日追加)でも承認されていますが、いずれの国でも美容・痩身を目的とした効能は承認されておらず、重大なリスクが明らかになっていない可能性があります。米国の添付文書には、ラットで甲状腺C細胞腫瘍が認められたことに基づく枠組み警告があり、髄様甲状腺がんの既往歴・家族歴のある方と多発性内分泌腫瘍症2型の方は使用できないとされています。また同添付文書は、急性膵炎について、膵炎の既往がある方での検討は行われていないとしています。
救済制度。承認された効能・効果と異なる目的での使用のため、重い副作用が生じても医薬品副作用被害救済制度の対象外です。
M&B美容皮フ科クリニック
当院では、医師の診察のうえでマンジャロ(チルゼパチド)の処方を行っています。痩身を目的とした使用は適応外使用です。費用・治療期間については、この記事内の「マンジャロ(チルゼパチド)による自由診療について」をご確認ください。
お電話:06-6747-9395(平日・土日祝 10:00〜19:00)
無理な勧誘は一切ありません/コース契約なし・完全都度払い制/布施駅から徒歩3分
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参考文献
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