「マンジャロで急性膵炎になることがある」——そう書かれた記事やSNSの投稿を見て、不安になった方は少なくないと思います。メディカルダイエットでお使いの方はもちろん、これから検討している方にとっても、「膵炎」という言葉の響きは決して軽くありません。
2026年6月には、マンジャロをめぐる報道が相次ぎ、厚生労働省や関連学会から「適正使用」を求める呼びかけも出されました。情報が一度にあふれると、「結局この薬は危ないのか、そうでないのか」が、かえって分かりにくくなってしまいます。
この記事では、マンジャロと急性膵炎について、添付文書や査読を経た研究報告といった信頼できる情報源をもとに、「どのくらいの頻度で起こるのか」「なぜ心配されてきたのか」「報道は何を問題にしているのか」を、できるだけ落ち着いて整理します。
この記事でわかること
- マンジャロで急性膵炎が起こる頻度は、報告上0.1%未満とまれであること
- 「なぜ膵炎が心配されるのか」という仕組みと、実際のデータのちがい
- 2026年6月の報道(適正使用の要請)が、何を問題にしているのか
- 当院でメディカルダイエットを行う場合の、医師管理・費用・リスク
目次
1. マンジャロと急性膵炎(結論)
はじめに、いちばん知りたい結論からお伝えします。マンジャロ(一般名:チルゼパチド)の使用で急性膵炎が起こる頻度は、添付文書上「0.1%未満」とされており、まれな副作用です。さらに、多くの臨床試験をまとめて解析した近年の研究でも、急性膵炎の発生はプラセボ(偽薬)と同じ程度で、薬の量を増やしても増えない、と報告されています。
一方で、急性膵炎は重い病気になりうるため、添付文書では「重大な副作用」として位置づけられ、注意が必要とされています。「頻度はまれだが、起きたときは見逃さない」——この二つを両立させることが大切です。だからこそ、医師の診察と管理のもとで使うことに意味があります。
膵臓(すいぞう)に急に炎症が起きる病気で、みぞおちや背中の強い痛み、吐き気・嘔吐などがあらわれます。原因の多くは胆石やアルコールで、薬がきっかけになることは全体の中ではごく一部とされています。
2. マンジャロとは何か
マンジャロは、2023年に日本で使えるようになった薬で、一般名をチルゼパチドといいます。「GIP受容体」と「GLP-1受容体」という二つの受容体に同時に働きかける、新しいタイプのお薬です(GIP/GLP-1受容体作動薬)。
GLP-1やGIPは、もともと私たちの体の中にある「インクレチン」と呼ばれるホルモンの仲間です。食事をとると腸から分泌され、血糖に応じてインスリンの分泌を助けたり、食欲や胃の動きをゆるやかにしたりする働きを持っています。マンジャロは、その働きを補う薬で、週1回の皮下注射で使用します。臨床試験では、血糖値の改善とともに体重の減少も報告されています。
日本でのマンジャロの効能・効果は「2型糖尿病」です。肥満症の治療薬としては、同じ成分が別の名前(ゼップバウンド)で承認されています。美容・痩身(ダイエット)を目的としてマンジャロを用いる場合は、承認の範囲外(適応外)の自由診療にあたります。当院では、この点をご説明したうえで、医師の診察・管理のもとで処方しています。
3. なぜ膵炎が心配されるのか
頻度はまれなのに、なぜマンジャロと膵炎がこれほど結びつけて語られるのでしょうか。理由は大きく三つあります。
理由①:インクレチン薬への歴史的な警戒
マンジャロと同じインクレチンの仕組みを使う薬(GLP-1受容体作動薬など)では、登場した当初の臨床試験で膵炎の報告がわずかに見られ、「クラス全体の注意点」として扱われてきました。その流れから、マンジャロにも同じ警戒のまなざしが向けられています。アメリカの規制当局も、注意喚起としてこの点を記載しています。
理由②:急な体重減少と胆石という「間接的な道すじ」
ここが、機序を理解するうえでの肝心な部分です。Mehta et al.(2025)は、複数の大規模な解析を踏まえ、「薬そのものが直接膵炎を起こすという考え方は、データに支持されていない」と整理しています。そのうえで注目しているのが、急激な体重減少と胆石の関係です。
体重が短期間に大きく減ると、胆石ができやすくなることが知られています。さらに、GLP-1の働きには胆のうの動きをゆるやかにする作用があり、胆汁がうっ滞しやすくなる可能性も指摘されています。胆石は急性膵炎の代表的な原因ですから、「薬が直接」というより、「急な減量と胆石を介した間接的な道すじ」のほうが、実態に近いと考えられています。
理由③:個々の症例報告の存在
「マンジャロを始めた後に膵炎を起こし、中止したら改善した」という個別の症例報告も発表されています。こうした報告は注意を促すうえで貴重ですが、一例一例の経過からは「本当に薬が原因だったのか」を確定するのが難しく、もともと胆石や他の要因が隠れていた可能性も残ります。集団全体でみたときに増えているかどうかは、次の章のデータで判断する必要があります。
4. 実際の発生頻度
それでは、まとまったデータでは実際にどうなっているのかを見ていきます。
複数の試験をまとめた解析(メタ解析)
チルゼパチドの17の臨床試験(14,645名)をまとめた解析(Kamrul-Hasan et al. 2024)では、膵炎の起こりやすさはプラセボと同等で、インスリンや他のGLP-1受容体作動薬と比べても差がなかったと報告されています。
また、19の臨床試験(15,471名)を対象とした別の解析(Benny & Ahmad 2026)でも、急性膵炎を起こした人は全体の0.1%未満ときわめてまれで、薬の量による差(用量反応)もみられませんでした。一部の試験を除いて計算し直しても、結果は同じ傾向だったとされています。
・添付文書上の急性膵炎の頻度:0.1%未満
・17試験14,645名の解析:膵炎リスクはプラセボと同等(Kamrul-Hasan et al. 2024)
・19試験15,471名の解析:急性膵炎は0.1%未満・用量による差なし(Benny & Ahmad 2026)
日本人を対象とした国内のデータ
海外を含む大規模なデータに加えて、日本人を対象とした国内の臨床試験でも膵臓の安全性が確認されています。日本人の2型糖尿病の方を対象とした国内第III相試験(SURPASS J-mono:Inagaki et al. 2022/SURPASS J-combo:Kadowaki et al. 2022)では、膵臓の安全性について次のように報告されています。
・SURPASS J-mono(日本人2型糖尿病636名):膵臓に関連する有害事象は11件みられたもののすべて無症候性で、急性膵炎と確定されたのは15mg群で1件のみ
・SURPASS J-combo:膵臓に関連する有害事象は7件ですべて無症候性、急性膵炎と確定された事象は0件
・アミラーゼ・リパーゼといった膵酵素の一時的な上昇はみられましたが、多くは軽度で重篤なものではないと報告されています
また、日本人の肥満症の方を対象としたSURMOUNT-J試験も実施されており(2025年発表)、日本人での有効性と安全性が検討されています。これらをふまえると、少ない用量から始めて徐々に増やすという適切な手順を守り、医師の管理のもとで使う場合、日本人が急性膵炎を起こす可能性は極めて低いと考えられます。
日本の治験では確定された急性膵炎がごくわずかであったにもかかわらず、添付文書に「重大な副作用:急性膵炎(0.1%未満)」と記載されているのは、海外を含む何万人ものデータではごくまれに発生がみられること、そしてインクレチン関連薬という系統のお薬で歴史的に注意されてきたことから、安全を優先して注意喚起がなされているためです。
数字をどう受け止めるか
これらの結果は、「マンジャロによって急性膵炎が大きく増えるとはいえない」ことを示しています。GLP-1受容体作動薬という仲間の薬を広くみても、膵炎のリスクがクラスとして上がるという考え方は、近年の大規模な解析では支持されていません(Mehta et al. 2025)。
ただし、注意点もあります。急性膵炎はもともとめったに起こらない出来事のため、試験で観察される件数自体が少なく、観察期間も中等度にとどまるものが中心です。そのため、「まれである」ことははっきりしていても、「ゼロである」と言い切れるわけではありません。頻度が低いことと、起きる可能性が完全にないことは、別の話として受け止めることが大切です。
5. 報道と適正使用
2026年6月、マンジャロをめぐる報道が大きく取り上げられました。ここで何が問題とされたのかを、正確に整理しておきます。
問われたのは「使い方」と「流通」
報道や行政の発信が問題にしたのは、「薬そのものが急に危険になった」ということではありません。厚生労働大臣は記者会見で、マンジャロの個人間の売買は原則として違法であると述べ、SNSなどを通じた無許可の販売について、厳正に対応する方針を示しました。
・医師の診察を受けずに入手・使用する例があること
・SNSや個人間の売買など、品質や保管が保証されない流通が広がったこと
・必要としている糖尿病の患者さんに、薬が行き渡りにくくなる懸念
・効能・効果として承認された範囲を理解しないままの使用
日本くすりと糖尿病学会も2026年6月8日に、マンジャロの適正使用と違法な流通の防止を求める注意喚起を出し、個人間売買のリスクや、目的を理解しないままの使用に繰り返し言及しています。上野賢一郎厚生労働大臣も、マンジャロは2型糖尿病を効能・効果として承認された薬である、という趣旨を述べています。
「医師の管理下」と「無診察・違法流通」は別物
大切なのは、ここで問題になっているのが「無診察での使用」や「違法な個人間売買・品質の不確かな流通」であって、医師の診察と管理のもとで行われる処方とは区別されるという点です。当院では、医師が問診・既往の確認を行い、適応外であることやリスクを説明したうえで、安全な減量ペースや副作用への対応を含めて管理しています。SNSやフリマ、個人輸入などで自己判断に入手・使用することは、品質も安全も担保されず、おすすめできません。
6. 当院での取り組みと安全に使うために
当院では、マンジャロやゼップバウンドによるメディカルダイエットを、医師の診察・管理のもとで行っています。急性膵炎との関係で知っておきたいことを整理します。
みぞおちや背中の、持続する強い痛み(しばしば吐き気・嘔吐を伴う)があらわれたときは、自己判断で様子を見ず、すみやかに医療機関に相談してください。こうした症状があるときは、いったん使用を中止し、医師の診察を受けることが大切です。
また、もともと膵炎を起こしたことがある方や、胆石がある方、お酒の量が多い方などは、はじめる前に必ず医師にお伝えください。急に大きく体重を減らそうとすると胆石ができやすくなるため、減量のペースを含めて、医師と相談しながら進めることが大切です。当院では、こうした背景の確認とリスクの説明を行ったうえで、お一人おひとりに合わせて処方の可否や用量を判断します。
7. 費用(自由診療)
マンジャロによるメディカルダイエットは、保険適用外の自由診療です。オンライン診療での費用は以下のとおりで、初回1本は2,980円(税込)からご利用いただけます。少ない用量から始め、体調をみながら段階的に調整します。
| 用量 | 1本 | 4本(総額) | 8本(総額) | 12本(総額) |
|---|---|---|---|---|
| 2.5mg | 3,980円 | 3,750円(15,000円) | 3,625円(29,000円) | 3,325円(39,900円) |
| 5mg | 6,980円 | 6,500円(26,000円) | 6,259円(50,000円) | 5,575円(66,900円) |
| 7.5mg | 8,980円 | 8,500円(34,000円) | 8,000円(64,000円) | 7,492円(89,900円) |
| 10mg | 13,500円 | 12,760円(51,040円) | 11,930円(95,440円) | 11,050円(132,600円) |
・初診料:3,300円(施術を受けていただく場合は無料)
・院内施注(ご自身で注射できない場合):2,200円
・採血(希望者のみ):4,400円
・オンライン診療の送料:1,980円
主な副作用として、吐き気・便秘・下痢・嘔吐・食欲減退・腹部の不快感などが報告されています。多くは軽度ですが、まれに急性膵炎(0.1%未満)や低血糖などが起こることがあります。前述のとおり、肥満・痩身目的での使用は承認の範囲外(適応外)の自由診療です。効果やリスクには個人差があり、合わない場合や中止が望ましい場合もあります。
8. よくある質問
Q. マンジャロで急性膵炎になる確率はどのくらいですか?
Q. どんな症状が出たら受診すべきですか?
Q. ダイエット目的での使用は問題ないのですか?
Q. もともと膵炎や胆石があっても使えますか?
Q. 報道を見て不安です。今の治療を続けて大丈夫でしょうか?
9. まとめ
- マンジャロで急性膵炎が起こる頻度は、添付文書上0.1%未満とまれで、多数の試験の解析でもプラセボと同等でした。
- 膵炎が心配される背景には、インクレチン薬への歴史的な警戒と、急な体重減少・胆石を介した間接的な道すじがあります。
- 2026年6月の報道が問題にしたのは、薬の危険性そのものより、無診察での使用や違法な流通でした。医師の管理下の処方とは区別されます。
- みぞおち・背中の強い痛みなどがあれば自己判断せず受診を。当院では医師の診察・管理のもとで、リスクを説明しながら行っています。
不安なときほど、断片的な情報ではなく、確かな情報源に立ち返ることが力になります。気になることは、どうぞ遠慮なくご相談ください。
関連記事
・本記事は、添付文書・研究報告・公的資料に基づく一般的な医療情報であり、診断・治療の代替ではありません。
・特定の使用を推奨・保証するものではありません。肥満・痩身目的での使用は承認の範囲外(適応外)の自由診療です。効果や副作用には個人差があります。
・実際の治療は、症状・既往歴・全身状態などを踏まえて医師が判断します。気になる症状があるときは医療機関にご相談ください。
参考文献
- 医薬品医療機器総合機構 2026, マンジャロ皮下注アテオス 電子添付文書, 医薬品医療機器総合機構, viewed 17 June 2026, <https://www.pmda.go.jp/>.
- 日本イーライリリー株式会社 2026, マンジャロ(チルゼパチド)投与による膵外分泌の安全性は?, 医療関係者向け情報, viewed 17 June 2026, <https://medical.lilly.com/jp/answers/167102>.
- 日本くすりと糖尿病学会 2026, 【注意喚起】マンジャロ®(チルゼパチド)の適正使用と違法流通防止について, 一般社団法人日本くすりと糖尿病学会, viewed 17 June 2026, <https://jpds.or.jp/>.
- Benny, O & Ahmad, SJS 2026, ‘Dose–response analysis of tirzepatide and acute pancreatitis: An international systematic review and quantitative meta-analysis of randomised trials’, Pancreatology, viewed 17 June 2026, <https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1424390326001419>.
- Inagaki, N, Takeuchi, M, Oura, T, et al. 2022, ‘Efficacy and safety of tirzepatide monotherapy compared with dulaglutide in Japanese patients with type 2 diabetes (SURPASS J-mono): a double-blind, multicentre, randomised, phase 3 trial’, Lancet Diabetes & Endocrinology, vol. 10, no. 9, pp. 623-633, DOI 10.1016/S2213-8587(22)00188-7, viewed 17 June 2026, <https://www.thelancet.com/journals/landia/article/PIIS2213-8587(22)00188-7/abstract>.
- Kadowaki, T, Chin, R, Ozeki, A, Imaoka, T & Ogawa, Y 2022, ‘Safety and efficacy of tirzepatide as an add-on to single oral antihyperglycaemic medication in patients with type 2 diabetes in Japan (SURPASS J-combo): a multicentre, randomised, open-label, parallel-group, phase 3 trial’, Lancet Diabetes & Endocrinology, vol. 10, no. 9, pp. 634-644, DOI 10.1016/S2213-8587(22)00187-5, viewed 17 June 2026, <https://www.thelancet.com/journals/landia/article/PIIS2213-8587(22)00187-5/abstract>.
- Kadowaki, T, Kiyosue, A, Shingaki, T, et al. 2025, ‘Efficacy and safety of once-weekly tirzepatide in Japanese patients with obesity disease (SURMOUNT-J): a multicentre, randomised, double-blind, placebo-controlled phase 3 trial’, Lancet Diabetes & Endocrinology, DOI 10.1016/S2213-8587(24)00377-2, viewed 17 June 2026, <https://www.thelancet.com/journals/landia/article/PIIS2213-8587(24)00377-2/abstract>.
- Kamrul-Hasan, ABM, Mondal, S, Dutta, D, Nagendra, L, Kabir, MR & Pappachan, JM 2024, ‘Pancreatic Safety of Tirzepatide and Its Effects on Islet Cell Function: A Systematic Review and Meta-Analysis’, Obesity Science & Practice, vol. 10, no. 6, e70032, DOI 10.1002/osp4.70032, viewed 17 June 2026, <https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/osp4.70032>.
- Mehta, AE, Lomeli, LD & Pantalone, KM 2025, ‘Glucagon-like peptide-1 receptor agonists and pancreatitis: A reconcilable divorce’, Cleveland Clinic Journal of Medicine, vol. 92, no. 8, p. 483, DOI 10.3949/ccjm.92a.24113, viewed 17 June 2026, <https://www.ccjm.org/content/92/8/483>.
