「マンジャロを調べていたら、甲状腺がんという言葉が出てきて手が止まった」——そういうご相談をいただきます。
がんという言葉が出てくると、そこで判断がつかなくなるのは自然なことだと思います。ただ、この話は「危ないか、危なくないか」の二択で書かれた記事がとても多く、それがかえって決めにくくしています。
この記事では、日本・米国・EUの3つの規制当局が、同じ薬について何と書いているかから出発します。結論を先に言うと、3つの当局で書いてあることが違います。その違いの理由まで、公開されている原文にさかのぼって確認していきます。
この記事でわかること
- ラットの2年間試験で甲状腺C細胞腫瘍が増えたのは事実で、それは電子添文に書かれていること
- 日本とEUは禁忌にしておらず、米国だけが禁忌かつ枠組み警告としていること
- 「げっ歯類だけの話」という説明が、チルゼパチドではそのまま当てはまらないとEUの審査当局が書いていること
- 日本の3つの第3相試験で甲状腺に関して報告された事象の実数と、その追跡期間の限界
- ヒトの研究4件の結果が一致していないこと
- カルシトニンの定期測定について、米国の添付文書が何と書いているか
- 受診の目安になる4つの症状
1. 結論|ラットでは増え、日本では禁忌ではない
先に3つの当局の扱いを並べます。すべて公開されている原文を取得して確認しました。
| 項目 | 日本 | 米国 | EU |
|---|---|---|---|
| 甲状腺髄様がんの既往・家族歴、多発性内分泌腫瘍症2型の方への投与 | 禁忌ではない。「本剤の安全性は確立していない」(15.2) | 禁忌(4項) | 禁忌ではない(4.3項は過敏症のみ) |
| 枠組み警告(Boxed Warning) | 制度として存在しない | あり(甲状腺C細胞腫瘍のリスク) | 制度として存在しない |
| 甲状腺についての指示 | 8.8項「本剤投与中は、甲状腺関連の症候の有無を確認し、異常が認められた場合には、専門医を受診するよう指導すること」 | 5.1項。症状を患者に説明すること。カルシトニンの定期測定は価値が不確かとしている | 4.4項に甲状腺の記載なし |
| ラットの試験結果の記載箇所 | 15.2項 | 13.1項 | 5.3項 |
| 「血中カルシトニン増加」を副作用として記載 | 記載なし | 5.1項でカルシトニンに言及 | 4.8項に記載あり。体重管理の試験では common(100人に1人〜10人に1人) |
よく「日本と米国で扱いが違う」と説明されますが、原文を並べると正確には米国だけが禁忌にしているという形です。EUは日本と同じく禁忌にしていません。
そして、この問題をもっとも詳しく論じているのは、禁忌にしていないEUの審査報告書です。そこに書かれていることが、この記事のいちばん重要な部分になります(第4章)。
2. ラットで起きたこと(用量つき)
出発点は、日本の電子添文に書かれている非臨床試験の結果です。これは推測ではなく、承認時の資料として当局に提出され、電子添文に載っている内容です (医薬品医療機器総合機構, 2026a)。
雌雄ラットを用いた2年間がん原性試験において、本剤を0.15、0.50及び1.5mg/kgの用量(それぞれ最大臨床推奨用量をヒトに皮下投与した際のAUCの0.12、0.36及び1.02倍のAUCをもたらす用量)で週2回皮下投与したところ、対照群と比較して、甲状腺C細胞腫瘍(腺腫及び癌)の発生頻度の増加がすべての用量でみられた。
ここで見ておきたいのは用量です。動物実験の話は「ものすごい量を投与したのだろう」と受け取られがちですが、この試験はそうではありません。AUC(体内に入った薬の総量の指標)で比べると、最低用量でもヒトの最大推奨用量の0.12倍、最高用量ではほぼ同等(1.02倍)です。ヒトとかけ離れた量ではありません。
米国の添付文書は、腺腫と癌を分けてもう少し細かく書いています (Eli Lilly and Company, 2026a)。
| 所見 | 統計学的に有意な増加がみられた用量 |
|---|---|
| 甲状腺C細胞腺腫 | 雄 0.5mg/kg以上/雌 0.15mg/kg以上 |
| 甲状腺C細胞腺腫+癌(合計) | 雌雄ともに検討したすべての用量 |
日本の電子添文の「すべての用量でみられた」は、この合計についての記述です。
一方、同じ電子添文はマウスの結果も書いています。rasH2トランスジェニックマウスを用いた6ヵ月間のがん原性試験では、1、3、10mg/kgのいずれの用量でも、甲状腺C細胞の過形成や腫瘍の増加は認められませんでした (医薬品医療機器総合機構, 2026a)。EUの製品情報も同じ結果を記載しています (European Medicines Agency, 2026)。
つまり動物のあいだでも結果が揃っていません。ここから「では、ヒトはどちらに近いのか」という問いになります。
3. なぜ「げっ歯類だけの話」と言われるのか
GLP-1受容体作動薬で甲状腺C細胞の腫瘍が増えるのは、この系統の薬に共通して知られてきた現象です。そして、それがげっ歯類に特有のものだと考えられてきたのには、はっきりした根拠があります。
リラグルチドについての研究で、GLP-1受容体がげっ歯類のC細胞に存在することが示された一方で、ヒトとカニクイザルの甲状腺C細胞ではGLP-1受容体の発現が低く、霊長類ではGLP-1受容体作動薬がアデニル酸シクラーゼを活性化せず、カルシトニンの放出も起こさなかったと報告されています。さらに同じ報告では、サルにヒト曝露量の60倍を超えるリラグルチドを20か月投与してもC細胞過形成は生じませんでした (Bjerre Knudsen et al., 2010)。
EUの審査当局も、この理解を「確立している」と書いています。純粋なGLP-1受容体作動薬については、C細胞の増殖はげっ歯類に特有のものであり、ヒトを含む非げっ歯類はC細胞にGLP-1受容体を発現していないためだ、という整理です (European Medicines Agency, 2022)。
また、この報告自体が慎重な書き方で終わっています。「ヒトの甲状腺においてGLP-1受容体を長期に刺激し続けた場合の帰結は、依然として不明であり、さらなる検討に値する」 (Bjerre Knudsen et al., 2010)。種差があるから終わり、という話にはなっていません。
4. チルゼパチドが他のGLP-1薬と違う1点
ここがこの記事のいちばん重要な部分です。
チルゼパチドは、GLP-1受容体だけでなくGIP受容体にも作用する薬です。そのため、第3章で述べた「純粋なGLP-1受容体作動薬についての種差」の説明が、そのまま当てはまるとは限りません。EUの審査当局は、審査報告書のなかでこの点を明示的に取り上げています (European Medicines Agency, 2022)。
・C細胞の過形成・腫瘍の増加は他の長時間作用型GLP-1受容体作動薬(リラグルチド、デュラグルチド、セマグルチド)で知られており、おそらくげっ歯類に特有のものである
・ただしチルゼパチドについては、純粋なGLP-1受容体作動薬とは異なり、ヒトで血中カルシトニンの上昇を引き起こしたため、ヒトへの関連性を除外することはできない
・チルゼパチドは純粋なGLP-1受容体作動薬ではないため、この件についてヒトへの関連性は不明である
・第3相試験において、ヒトで血中カルシトニンの小さいながらも明確で一貫した上昇がみられた。この点で、チルゼパチドの作用は純粋なGLP-1受容体作動薬の作用とは異なる
・比較薬であるセマグルチド1mgとデュラグルチド0.75mgではカルシトニンは上昇しておらず、このわずかな上昇はチルゼパチドに特有のものであることを示唆する
つまり、「げっ歯類だけの話だから問題ない」という説明は、チルゼパチドについては当局自身が採用していません。この薬では、げっ歯類でC細胞増殖と並行して起こるカルシトニン上昇が、ヒトでも起きているからです。
ただし、同じ審査報告書は続けてこうも書いています。ここを落とすと不正確になります。
・カルシトニンの上昇はふつう可逆的で、急性の臨床的意義はなく、多くは基準範囲内であった
・ただし長期的な帰結(C細胞悪性腫瘍のリスク増加など)は、現時点では不明である
・その機序は明らかにできなかった
・甲状腺C細胞腫瘍は、市販されている他のGLP-1受容体作動薬と同様に、リスク管理計画上の「重要な潜在的リスク」として監視対象に含められている
「上昇はしているが、多くは基準範囲内で、戻る。ただし長く続けたときにどうなるかは分かっていないので、監視の対象にしている」——これが当局の整理です。
この差は、書いてあるものにも表れています。EUの製品情報4.8項には副作用として「血中カルシトニン増加」が記載されており、体重管理の試験における頻度は common(100人に1人以上10人に1人未満)です (European Medicines Agency, 2026)。一方、日本のマンジャロ電子添文の副作用の項に、カルシトニンという語は出てきません(臨床検査の欄にあるのは膵アミラーゼ増加・リパーゼ増加・体重減少です) (医薬品医療機器総合機構, 2026a)。ゼップバウンドの電子添文も同じです (医薬品医療機器総合機構, 2026b)。
痩身を目的とする使い方は、EUで言えば体重管理の用途にあたります。その用途の試験では common と書かれている項目が、日本の電子添文には載っていない——これは読者が知っておいてよい違いだと考えます。
5. 日本の臨床試験で報告されたこと
日本人を対象にした第3相試験は3つあります。いずれも試験登録簿に有害事象の一覧が公開されているので、甲状腺とカルシトニンに関係する項目を拾いました。
| 試験 | 対象・期間 | 甲状腺・カルシトニン関連の報告 |
|---|---|---|
| SURPASS J-mono | 2型糖尿病 636例・52週 (チルゼパチド5/10/15mg、デュラグルチド0.75mg) |
甲状腺腫瘤 1例(5mg群 1/159) 甲状腺機能亢進症 1例(デュラグルチド群 1/159) 良性副甲状腺腫瘍 1例(10mg群 1/158) |
| SURPASS J-combo | 2型糖尿病 443例・52週 (チルゼパチド5/10/15mg) |
血中カルシトニン増加 1例(15mg群 1/148) 高カルシトニン血症 1例(10mg群 1/147) |
| SURMOUNT-J | 肥満症 225例・72週 (チルゼパチド10/15mg、プラセボ) |
血中カルシトニン増加 1例(10mg群 1/73) |
3試験を通じて、甲状腺の悪性腫瘍(甲状腺髄様がんを含む)およびC細胞過形成という項目は、どの群にもありません (Eli Lilly and Company, 2022a, 2022b, 2024)。
ただし、この「報告がない」を「なかった」と読むことはできません。理由が2つあります。
1つめは期間です。52週から72週という追跡で、発生までに長い時間がかかるがんを捉えることはできません。EUの審査当局も、臨床試験の期間では甲状腺がんのような潜伏期の長い事象を同定できないと明記しています (European Medicines Agency, 2022)。
2つめは検出のしかたです。同じ審査報告書は、C細胞過形成の検出には特殊な診断が必要であり、そのためほとんどの場合は検出も報告もされないだろうと書いています (European Medicines Agency, 2022)。通常の診療で行う検査では見つからない、という意味です。
そしてもう1つ、3つの試験はいずれも、甲状腺髄様がんの既往または家族歴のある方と、多発性内分泌腫瘍症2型の方を除外基準で除いています (Eli Lilly and Company, 2022a, 2022b, 2024)。日本の肥満症を対象としたSURMOUNT-Jも同じです。この条件に当てはまる方についてのデータが、そもそも臨床試験のなかに存在しません。日本の電子添文が「安全性は確立していない」と書いているのは、この状況を指しています。
6. ヒトの研究は何を示しているか
動物の結果と、期間の短い臨床試験のあいだを埋めるのが、実際に薬を使った多数の人を追いかけた研究です。はじめにお伝えしておくと、結果が一致していません。
| 研究 | 規模・方法 | 結果 |
|---|---|---|
| Bezin et al., 2023 | フランス全国の医療保険データベース。甲状腺がん2,562例と対照45,184例の比較 | 1〜3年使用で全甲状腺がん 1.58倍(95%信頼区間 1.27〜1.95)、甲状腺髄様がん 1.78倍(1.04〜3.05) |
| Pasternak et al., 2024 | デンマーク・ノルウェー・スウェーデンの3か国コホート。GLP-1受容体作動薬 145,410人とDPP-4阻害薬 291,667人、平均3.9年追跡 | 全甲状腺がん 0.93倍(0.66〜1.31)、甲状腺髄様がん 1.19倍(0.37〜3.86)。増加は認められず、信頼区間の上限でも相対リスクの増加は31%を超えない |
| Silverii et al., 2024 | 52週以上の無作為化比較試験64件のメタ解析 | 全甲状腺がん 1.52倍(1.01〜2.29)。104週以上に限ると1.76倍(1.00〜3.12)。甲状腺髄様がんでは有意差なし。5年間で1,349人に1人という試算 |
| Eisa and Barood, 2026 | 無作為化比較試験15件・84,237人のメタ解析。GIP/GLP-1の両方に作用する薬を含む | 全甲状腺がん 1.52倍(0.86〜2.68)。有意差なし。まれな事象のため推定の幅が大きく、エビデンスの確実性は最低の区分と評価 |
読み方を3点だけ補足します。ここからは私の読み取りであって、論文に書かれた結論そのものではありません。
第一に、増加を示した研究と示さなかった研究の両方があります。どちらかだけを引いて「増える」「増えない」と言うことはできません。
第二に、推定値そのものは1.5倍前後に集まっています。Bezinが1.58倍、Silveriiが1.52倍、Eisaが1.52倍です。分かれているのは推定値ではなく、その幅が1倍をまたぐかどうかです。
第三に、相対的な倍率と実際の人数は別の話です。Silverii et al. (2024) は、この関連が1件の症例が動くだけで統計的な有意差が消える程度に不安定であることを示す指標を報告しており、同時に5年間で1,349人に1人という試算を示しています。1.5倍という数字の印象と、実際に増える人数の少なさは、どちらも同じ論文に書かれています。
そして重要な限界があります。ここに挙げた4件は、いずれもチルゼパチドだけを対象にした研究ではありません。Eisa and Barood (2026) はGIP/GLP-1の両方に作用する薬を含んでいますが、チルゼパチド単独の数値は示していません。チルゼパチドに限定した甲状腺がんの疫学研究を、今回探した範囲では見つけられませんでした。存在しないという意味ではなく、確認できなかったという意味です。
7. カルシトニンは定期的に測るべきか
ここまで読むと、「では血液検査でカルシトニンを測っておけば安心なのでは」と考えたくなります。この点について、米国の添付文書は踏み込んだ書き方をしています (Eli Lilly and Company, 2026a)。
・血中カルシトニンの定期的な測定や甲状腺超音波の使用は、甲状腺髄様がんの早期発見において価値が不確かである
・そうした検査はむしろ、不必要な検査・処置のリスクを高めうる。血中カルシトニンの検査特異度が低く、かつ甲状腺疾患の背景にある頻度が高いためである
・著しく高い血中カルシトニン値は甲状腺髄様がんを示すことがあり、甲状腺髄様がんの患者は通常50 ng/Lを超える値を示す
・血中カルシトニンを測定して高値であった場合には、さらに評価すべきである
・診察や頸部の画像検査で甲状腺の結節が認められた場合にも、さらに評価すべきである
(ZEPBOUNDの添付文書5.1項も、製品名以外は同じ文章です。Eli Lilly and Company, 2026b)
まとめると、「測れば安心」ではなく、「測ることが早期発見に役立つかどうかが不確かで、かえって不要な検査を招きうる」という整理です。カルシトニンは甲状腺のC細胞から分泌されるホルモンで、甲状腺髄様がんと関係する指標ではありますが、高い値が出ても、がんではない原因で上がっていることが多い——これが「特異度が低い」の意味です。
当院でも、痩身目的のマンジャロをお使いの方に、カルシトニンの定期測定をお勧めしてはおりません。この判断は、上記の記載に沿ったものです。測ることに意味がある場面は、症状や診察所見があるときです。
8. 電子添文8.8が求めていること
では、実際には何をすればよいのでしょうか。日本の電子添文には、はっきり書かれている一文があります (医薬品医療機器総合機構, 2026a)。
本剤投与中は、甲状腺関連の症候の有無を確認し、異常が認められた場合には、専門医を受診するよう指導すること。
(ゼップバウンド電子添文 8.6項も同じ一文です)
つまり日本で求められているのは、定期的に検査をすることではなく、症候の有無を確認することです。ここで「甲状腺関連の症候」が具体的に何を指すかは、電子添文には書かれていません。列挙しているのは米国の添付文書です (Eli Lilly and Company, 2026a)。
| 症状 | 気づき方の例 |
|---|---|
| 首のしこり(腫瘤) | のどぼとけの下あたりに、それまでなかったふくらみや硬いものを触れる |
| 飲み込みにくさ | 固形物が引っかかる感じが続く |
| 息苦しさ | 横になったときや動いたときの息のしにくさが続く |
| しわがれ声が続くこと | かぜが治ったあとも声のかすれが戻らない |
いずれも一度あっただけで心配する必要はなく、続いているかどうかが目安になります。米国の添付文書も、診察や頸部の画像検査で甲状腺の結節が見つかった場合はさらに評価すべきだとしています。
そして、はじめの診察で必ずお伝えいただきたいことがあります。
診察のときに申し出ていただきたいこと
- ご自身に甲状腺髄様がんの既往があるかどうか
- ご家族に甲状腺髄様がんの方がいるかどうか
- 多発性内分泌腫瘍症2型と言われたことがあるかどうか
- 甲状腺の病気で通院中・経過観察中かどうか、首の手術を受けたことがあるかどうか
日本の電子添文はこれらを禁忌にしていません。禁忌ではありませんが、「安全性は確立していない」と書かれている領域です (医薬品医療機器総合機構, 2026a)。また第5章で述べたとおり、この条件に当てはまる方は臨床試験から除外されていたため、参照できるデータがありません。米国では禁忌とされています。当院では、これらに該当する方について、痩身目的のマンジャロの処方は行いません。他の方法をご一緒に考えます。
9. マンジャロによる自由診療について
マンジャロ(チルゼパチド)による自由診療について
当院が痩身を目的として行うマンジャロの処方は、国内で承認されていない使い方(適応外使用)です。ご検討の前に、以下を必ずお読みください。
治療の内容・期間・回数
週1回(1か月あたり4回程度)、ご自身で皮下注射します(院内での注射も可能です)。2.5mgから始め、4週間投与したのち5mgへ増量します。5mgで効果が十分でない場合は、4週間以上の間隔をあけて2.5mgずつ増量することがあります(電子添文の用法及び用量)。胃腸の症状などで体に合わない場合は、減量したり、増量を先延ばしにしたりします。2.5mgのまま続けていただく場合もあります。当院でお出しする用量は2.5mg・5mg・7.5mg・10mgです。治療期間:あらかじめ定まった期間はありません。2.5mgから増量していく場合、当院で扱う最大量の10mgに達するまでに最短で12週間かかります(4週間ごとに2.5mgずつ増量した場合)。その後どのくらい続けるかに定めはなく、減った体重を保つには継続が必要になる場合があり、中止したあとに体重が戻ることがあります。続けるかどうかは、効果と副作用を確認しながら医師とご相談のうえ決めます。
費用(自由診療・保険適用外)
- マンジャロ 1本 3,250円〜12,980円(税込/用量とご購入本数により異なります)
- 初診料 3,300円(施術を受けていただく場合は無料)
- 採血(ご希望の方のみ)4,400円/院内での注射 2,200円
- オンライン診療の送料 10本以下 1,980円/12本以上 3,000円(目安)
1回のお会計はお薬代で3,980円(2.5mgを1本)〜126,000円(10mgを12本まとめて)です。これに上記の初診料・採血・院内での注射・送料が、必要に応じて加わります。用量別・本数別の価格は料金ページをご覧ください。
主なリスク・副作用
5%以上の方にみられるもの:悪心(吐き気)、嘔吐、下痢、便秘、腹痛、消化不良、食欲減退
重大な副作用:低血糖(頻度不明)、急性膵炎(0.1%未満)、胆嚢炎(頻度不明)・胆管炎(0.1%未満)・胆汁うっ滞性黄疸(頻度不明)、アナフィラキシー・血管性浮腫(いずれも頻度不明)、イレウス(頻度不明)
嘔吐をともなう持続的な激しい腹痛、高度の便秘やおなかの張りなどがあらわれた場合は、使用を中止し速やかに医師の診察を受けてください。じんましん、顔やのどの腫れ、息苦しさなど、重いアレルギー反応を思わせる症状があらわれた場合も、すぐに受診してください。このほか、妊娠・授乳中の方、持病やお薬の飲み合わせによって、使用できない場合や注意が必要な場合があります。診察で確認します。(マンジャロ電子添文 2026年9月改訂・第11版)
適応外使用に関する情報
未承認の使い方です。マンジャロ(一般名:チルゼパチド)は2型糖尿病の治療薬として国内で承認されています。痩身・ダイエット目的での処方は国内で承認されていません。
入手経路。国内の医薬品卸売業者から、国内で承認された医薬品を仕入れています。個人輸入は行っていません。
国内の承認医薬品等。同一成分(チルゼパチド)の肥満症治療薬が国内で承認されています。使用できる医療機関・対象者に要件があり、美容・痩身目的では使用できません。
諸外国の情報。チルゼパチド製剤は米国(体重管理の製剤は2023年11月8日承認)および欧州(2022年9月15日承認、体重管理の効能は2023年12月11日追加)でも承認されていますが、いずれの国でも美容・痩身を目的とした効能は承認されておらず、重大なリスクが明らかになっていない可能性があります。米国の添付文書には、ラットで甲状腺C細胞腫瘍が認められたことに基づく枠組み警告があり、髄様甲状腺がんの既往歴・家族歴のある方と多発性内分泌腫瘍症2型の方は使用できないとされています。
救済制度。承認された効能・効果と異なる目的での使用のため、重い副作用が生じても医薬品副作用被害救済制度の対象外です。
10. よくあるご質問
Q. マンジャロを使うと甲状腺がんになりますか?
Q. ラットで腫瘍が増えたのに、日本で禁忌になっていないのはなぜですか?
Q. 甲状腺の血液検査(カルシトニン)を受けたほうがよいですか?
Q. 家族に甲状腺の病気の人がいます。使えないのでしょうか?
Q. どんな症状が出たら受診すればよいですか?
Q. 首に腫れがあることに気づきました。すぐにやめるべきですか?
11. まとめ
この記事で確認できたことを整理します。
- ラットの2年間試験で甲状腺C細胞腫瘍が全用量で増えたのは事実です。ヒトとかけ離れた量ではなく、最高用量はヒトのほぼ同等の曝露量でした。rasH2マウスでは増えていません
- 日本とEUは禁忌にしておらず、米国だけが禁忌かつ枠組み警告としています。日本は「安全性は確立していない」としたうえで、症候の確認を求めています
- 「げっ歯類だけの話」という説明を、チルゼパチドについては当局自身が採用していません。この薬はヒトでも血中カルシトニンが上がり、その点で他のGLP-1受容体作動薬と違うとEUの審査報告書に書かれています。ただし上昇は多くが基準範囲内で可逆的であり、急性の臨床的意義はないとも記載されています
- 日本の第3相試験3つで、甲状腺の悪性腫瘍とC細胞過形成の報告はありません。ただし追跡は52〜72週で、がんを捉える期間ではありません
- ヒトの研究は結果が一致していません。推定値は1.5倍前後に集まっていますが、増加を認めなかった研究もあり、絶対的な増加はごく小さいと試算されています。チルゼパチドに限定した疫学研究は確認できませんでした
- カルシトニンの定期測定は推奨されていません。早期発見の価値が不確かで、不要な検査を招きうるとされています
- できることは、首のしこり・飲み込みにくさ・息苦しさ・しわがれ声の持続に気づいたら受診することです。そして甲状腺髄様がんの既往・家族歴、多発性内分泌腫瘍症2型については、はじめの診察で必ずお申し出ください
分かっていないことが残っている、というのが正直なところです。だからこそ、数字の大きさだけで決めるのでも、不安だけで決めるのでもなく、ご自身の体質やご家族歴を確認したうえで判断していただきたいと考えています。判断の材料はご一緒に揃えます。どうぞご相談ください。
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参考文献
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